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アズワン株式会社が日本の代理店として販売するエストニア・Bioatlas社製の「Atlas ClearSight Tablet」は、アガロース電気泳動用のゲル作製を手軽に作製できる、ひょう量不要のアガロースゲル作製用タブレットです。

アガロースゲル電気泳動用のゲル作製を素早く手軽に!Bioatlas社「Atlas ClearSight Tablet」

Bioatlas社について

Bioatlas社は、エストニアに所在する2006年創業の企業です。高品質な分子生物学研究用製品を製造販売し、「ワンストップショップ」となることで研究者が試薬にかける時間を削減し、その時間を研究に充てられるよう目指し、設立されました。
販売している製品には
・DNA染色試薬
・DNAポリメラーゼ
・PCRミックス/qPCRミックス
・RT-qPCR用キット
・PCR用バッファーと試薬類
・ヌクレオチド類
・電気泳動用試薬
などがあります。

アガロースゲル電気泳動とは?アガロースゲル電気泳動の原理とその歴史

アガロースとは寒天構成成分の一つで、寒天の元となる海藻から抽出・精製できます。このアガロースをゲル化すると網目状の構造ができます。電流と共に核酸(DNAやRNA)をゲル中で流すと、核酸の大きさによる網目状構造の通りやすさの違いから、核酸の塩基数(ベースペア;base pair)ごとの分離ができます。塩基数の多い(分子量の大きい)核酸の断片は構造内を通りにくいため移動時間が遅く(泳動距離が短く)、ゲルの上部で留まります。一方、塩基数の少ない核酸の断片は泳動距離が長くなり、ゲルの下部まで流れます。これら核酸の断片は染色試薬で可視化することができ、可視化にはエチジウムブロマイド(Ethidium Bromide;EtBr)やその代替品が使用されます。これが、アガロースゲル電気泳動(Agarose Gel Electrophoresis)の原理です。
アガロースではなくアガー(寒天)を用いた電気泳動の歴史は古く、1950年代後半の論文ではタンパク質の分離にアガーゲルを用いたものがあります(1)。1960年代後半には、DNAの電気泳動においてアガロースゲルの使用が有効であると報告されました(2)。

アガロースゲルの特徴(長所)はその分離幅の大きさにあります。アガロースゲルを作る際に、ゲルの濃度やバッファー(TAEまたはTBE)を変えることで、分離したい核酸の幅を操作できます。また染色試薬をゲルに含めるか(先染め)含めないか(後染め)といったプロトコルもあります。なお、塩基数が少ない核酸などで解像度高く分離を行う場合には、別のゲルである(ポリ)アクリルアミドゲルが使用されます。

アガロースゲルの作り方と、よくあるトラブル

アガロースゲルを作製するには、まずアガロースをひょう量し、それを作製したいゲル濃度に合わせた量のTAEまたはTAEバッファーに加え、電子レンジで加熱してアガロースを溶解します。溶解させたアガロースを60℃程度まで冷まし、トレイに流し込んで固めます。この作製過程において、溶解が不十分であったり、アガロース溶液を急激に冷やすと不均一なゲルができ、泳動パターンに影響することがあります。
ゲル濃度に合わせたアガロースのひょう量、バッファーの準備は手間がかかる上、ひょう量ミスによるトラブルの原因ともなり得ます。さらにEtBrは強い変異原性を持ちます。EtBrを先染め用に調製する手間や添加のタイミング(ある程度冷めてから添加する)など、一見簡単そうに見えるゲル作製であっても、注意・考慮するべき点が多くあります。

アガロースゲル作製がとても素早く簡単にできる!Bioatlas社「Atlas ClearSight Tablet」

面倒なアガロースのひょう量を無くし、毎回安定した先染め用の電気泳動用アガロースゲルを簡単に作製できるよう開発されたのが、Bioatlas社のアガロースゲル作製用タブレット(錠剤)「Atlas ClearSight Tablet」シリーズです。
このタブレットはブリスターパックに入っており、希望のゲル濃度になるよう、指定量の水またはバッファーを加えます。EtBrの代替となる低変異原性(非発がん性)核酸染色試薬「Atlas ClearSight」、またはより感度の高い核酸染色試薬「Atlas ClearSight Gold」が含まれたタブレットがあり、検出したいDNAあるいはRNA量に合わせて選択が可能です。
※「Atlas ClearSight」、「Atlas ClearSight Gold」の非発がん性はAMES試験により確認されていますが、お取扱いには十分ご注意ください

Atlas ClearSight Tabletシリーズによる簡単なアガロースゲルの作製法

(1) タブレットを溶媒に加える。
使用する溶媒量とタブレット数は、作製したいゲル濃度によって異なります。各製品のデータシートをご参考ください。温めた溶媒は使用しないでください。またゲルの厚さは0.5 cmを超えないようにしてください。
(2) 溶媒をタブレットに染みこませ、溶解する。
(3) 溶液が透明になり、粒子が全て溶けたことを目視できるまで加熱する。
(4) 60~70℃になるまで冷ました後、ゲルトレイに流し込み、固める。

Atlas ClearSight Tabletシリーズの製品詳細

■Atlas ClearSight Tablet
EtBrと異なり、低変異原性(非発がん性)で高感度(dsDNA:20 ng、ssDNA:200 ng、Total RNA:先染め250 ng、後染め100 ng)な、安全性と利便性の高い核酸染色用色素「Atlas ClearSight」を含むタブレットです。蛍光(励起波長490 nm、蛍光波長530 nm)またはUVイルミネーターで検出します。
Running Buffer(泳動バッファー)で溶解させる、バッファーを含まないタブレット、およびTAEあるいはTBEを含むタブレットがあります。

商品コード品名容量溶解に使用する溶媒
アズワン品番:
83-2416-59
メーカーコード:BA50202
Atlas ClearSight Agarose Tablet100錠×0.5 gRunning Buffer
(泳動バッファー)
アズワン品番:
83-2416-60
メーカーコード:BA50203
Atlas ClearSight Tablets with TAE100錠×0.5 g純水
アズワン品番:
83-5843-57
メーカーコード:BA50204
Atlas ClearSight Tablets with TBE100錠×1 g純水

■Atlas ClearSight Gold Tablet

低変異原性でAtlas ClearSightよりも高感度(DNA:0.2 ng、Total RNA:1ng)な、安全性利便性の高い核酸染色用色素(EtBr代替品)である「Atlas ClearSight Gold」が含まれたタブレットです。DNAやRNAに結合すると緑色の蛍光(励起波長~250 nmまたは~482 nm、蛍光波長~509 nm)を発します。Blue/Green LEDを用いて、アガロースゲル中のDNAおよびRNAを安全に可視化できます。

Running Buffer(泳動バッファー)で溶解させる、バッファーを含まないタブレット、および純水で溶解させる、TAEを含むタブレットがあります。

商品コード品名容量溶解に使用する溶媒
アズワン品番:
83-2416-61
メーカーコード:BA50401
Atlas ClearSight Gold Agarose Tablets100錠×0.5 gRunning Buffer
(泳動バッファー)
アズワン品番:
83-5843-58
メーカーコード:BA50402
Atlas ClearSight Gold Tablets with TAE100錠×0.5 g純水

Atlas ClearSight Tabletシリーズの比較

アズワン品番メーカーコード製品アガロース染色剤Bufferの種類検出
ClearSightClearSight GoldTAETBEUVBlue/Green
83-2416-59BA50202Atlas ClearSight Agarose Tablets
83-2416-60BA50203Atlas ClearSight Tablets with TAE
83-5843-57BA50204Atlas ClearSight Tablets with TBE
83-2416-61BA50401Atlas ClearSight Gold Agarose Tablets
83-5843-58BA50402Atlas ClearSight Gold Agarose Tablets with TAE

Atlas ClearSight とAtlas ClearSight Goldは単品販売もしています!

アガロースゲルで使用する核酸染色用色素(EtBr代替品)、「Atlas ClearSight」および「Atlas ClearSight Gold」は、単品でも販売しています。先染め、後染めの両方に対応しています。

商品コード品名容量
アズワン品番:
83-2416-81
メーカーコード:BH40501
Atlas ClearSight DNA Stain1 ml
アズワン品番:
83-2416-82
メーカーコード:BH40701
Atlas ClearSight Gold DNA Stain1 ml 
bioatlas, atlas clearsight
図:アガロースゲル中でAtlas ClearSight DNA Stainを使用した例(AおよびB)

会社情報(お問い合わせ先)

会社名アズワン株式会社
部署名ソリューション・デザイン部 試薬グループ
住所〒530-0005大阪市北区中之島4丁目3番51号 Nakanoshima Qross 未来医療R&Dセンター10階1002室
TEL06-6447-8641
FAX06-6447-8642
Websitehttps://axel.as-1.co.jp/
E-mailReagents@so.as-1.co.jp

参考文献

  1. ZAK B, SUN KM. Technic for separation of protein by means of agar-gel electrophoresis. Am J Clin Pathol. 1958 Jan;29(1):69-79. doi: 10.1093/ajcp/29.1_ts.69. PMID: 13508606.
  2. Takahashi M, Ogino T, Baba K. Estimation of relative molecular length of DNA by electrophoresis in agarose gel. Biochim Biophys Acta. 1969 Jan 21;174(1):183-7. doi: 10.1016/0005-2787(69)90241-x. PMID: 4885691.