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株式会社サンフコが販売する、アメリカ・ProliantHealth & Biologicals社製のアルブミン「AlbuRich」は、脂肪酸および特定の成分を添加した高品質なウシ血清アルブミン(BovineSerum Albumin ; BSA) で、多様化する細胞培養用培地の製造を容易にします。

細胞培養での用途を拡げる! Proliant Health & Biologicals社のウシ血清アルブミン「AlbuRich」

Proliant Health & Biologicals社について

Proliant Health & Biologicals社はLauridsenグループの子会社として1981年に設立された、診断薬やバイオ医薬品、ライフサイエンス研究企業向けに高純度な血漿分画や動物由来抽出物を提供する企業です。

アルブミン(Albumin)とは?

アルブミンは主に肝臓で生成され、血液中で豊富に含まれる主要なタンパク質の一成分です。動物種によって若干の違いはあるものの、おおよそ600前後のアミノ酸長を持つタンパク質です。

アルブミンの主な機能としては、水、カルシウムイオンを始めとした金属イオン、ホルモン、脂肪酸、ビリルビンや薬剤などの結合や、血液のコロイド浸透圧(膠質浸透圧)調節への関与があります。アルブミン遺伝子の変異は「家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症(Familial Dysalbuminemic Hyperthyroxinemia ; FDH)や無アルブミン血症(Albuminemia)といった疾患への関与が示唆されていることから、アルブミンは体内で非常に重要な役割を果たしています。

研究現場ではヒト由来のアルブミン(Human Serum Albumin)の他、安価・手軽に入手できるウシ由来のアルブミン(Bovine Serum Albumin;BSA)が、ELISAやウェスタンブロッティングなどのアッセイでのブロッキング剤や、ビシンコニン酸を用いるBCA法(Bicinchoninic acid assay)によるタンパク質定量時の標準品(スタンダード)として、あるいはタンパク質の安定化剤(Carrier Protein;キャリアタンパク質)などとして使用されています。またBSAが持つ主要な栄養成分、成長因子やホルモン、毒性のある化合物(例:過剰量の鉄)との結合・輸送の性質は、哺乳類の細胞や細菌の増殖を補助することから、バイオ医薬品化合物の製造における、合成培地の重要な成分でもあります(1)。

血液からアルブミンを精製する一般的な方法の一つとして、ハーバード大学のCohn博士らによって確立された方法(Cohn法)があります。Cohn法は低温エタノールの濃度を変え、遠心と沈殿を重ねてアルブミンを得る方法で、BSAの製品名でよく見かける「Fraction V」とは、最後の沈殿分画(第五分画)から得られたアルブミンを指しています。このことから、BSAそのものを「Fraction V」と表現することもあります。

Cohn法以外のアルブミン精製法として、クロマトグラフィーによる精製法があります。これにより得られるアルブミンは、Cohn法で得られるアルブミンとは異なり、脂質をはじめとした様々な血清由来成分が含まれていると考えられています。クロマトグラフィーで精製されたBSAは、ヒトES細胞や精子形成といった培養での有効性が報告されています(2,3)。

細胞培養における多様な要件向けに開発された「AlbuRich」

細胞培養では一般的にウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;FBS)を培養時に使用しますが、実験によってBSAがFBSの代替品として使用される場合もあります。
Proliant Health & Biologicals社は、バイオプロセス培地におけるこれまでの脂肪酸の導入とバイオアベイラビリティの課題に取り組みました。そして開発されたのが、使用する培地組成の要件に合わせて機能するよう脂肪酸量を調整・デザインしたBSAである、Proliant Health & Biologicals社の「AlbuRich」です。AlbuRichの製造における分画方法は、Cohn法(低温エタノール法)やクロマトグラフィー法ではなく、熱ショック法(Heat Shock Fractionation ; ヒートショック分画法)を用いています。得られたBSAから脂肪酸を一度除去し、そのBSAへ特定濃度の脂質やコレステロールを添加することで、脂質含有量が調整されたAlbuRichを製造しています。脂質含有量や組成が異なる複数の製品ラインアップを揃えることで、特に細胞培養アプリケーションで使用要件に合った製品を見つけていただくための選択肢を提供しています。

AlbuRichの利点とは?

天然由来であるBSAによって実験系に持ち込まれるエンドトキシン、プロテアーゼ、免疫グロブリンや他の血液由来タンパク質は、ダウンストリームの実験での安定したパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
以下の利点を持つAlbuRichは、結果の再現性を最大化するBSAとして、お客様の研究開発に最適です。

  1. 高純度、低阻害、低バックグラウンド
  2. IgGおよびプロテアーゼ活性を非検出
    ⇒アッセイの完全性、成分安定性、細胞培養での最適性を提供します。
  3. 優れた溶解性とろ過性による、使いやすさ
  4. 原産物のトレーサビリティによる、各種規制承認プロセスを加速
  5. 独自の「Closed-Loop製法」によるコンタミネーションリスク削減と再現性の最大化

Proliant Health & Biologicals社の「Closed-Loop製法」とは?

Proliant Health & Biologicals社独自の「Closed-Loop製法」は、原材料をタンクに入れてから乾燥機にかけるまで、一切外部に曝されることがない製法です。この製法により、コンタミネーションのリスクを減らし、研究結果の再現性を最大化します。

安心して使用できる、各種認証・検証済のBSA「AlbuRich」

様々な家畜関連の伝染病の不安や規制に対応するため、AlbuRichは以下の認証・検証や原材料を元に製造されています。

  1. ニュージーランド第一次産業省(Ministry for Primary Industries;MPI)検査済みニュージーランド産ウシ血漿から製造
  2. プリオン(TSE)クリアランスを検証済み
  3. cGMP準拠による製造
  4. TSE適合証明書

AlbuRichのアプリケーション例

AlbuRichは細胞培養における以下の用途での使用を想定しています。

  1. 培地添加物として
  2. FBS使用量削減目的として
  3. ワクチン開発目的として
  4. 哺乳動物細胞培養の製造目的として

Proliant Health & Biologicals社AlbuRich製品ラインアップ

添加された脂肪酸やコレステロールの割合により、現在4種類の製品ラインアップがあります。

商品コード67645676756768568695
商品名AlbuRich P15AlbuRich PRPAlbuRich P140AlbuRich P20
容量100 g, 1 kg, 10 kg100 g, 1 kg, 10 kg100 g, 1 kg, 10 kg100 g, 1 kg, 10 kg
脂肪酸含有率(%)0.20.50.51
添加された脂肪酸の種類非エステル化脂肪酸エステル化脂肪酸エステル化脂肪酸非エステル化脂肪酸
コレステロール含有率(%)-0.1--
エンドトキシン量≤ 3 EU/mg≤ 3 EU/mg≤ 3 EU/mg≤ 3 EU/mg
IgG含有量非検出非検出非検出非検出
プロテアーゼ<0.001 units/mg<0.001 units/mg<0.001 units/mg<0.001 units/mg
特長1結核検出用製品を研究する世界最大級の医薬品会社で採用トップ15の医薬品会社で採用レプトスピラワクチン研究開発を行う、世界トップ20の製薬企業で採用レプトスピラワクチン研究開発を行う、世界トップ5の製薬企業で採用
特長2Boval社(※) #IM-0015を元に製造他社同等品をモデルに、同様の脂肪酸とコレステロール成分で製造Boval社(※) #IM-0020を元に製造
特長3レプトスピラワクチン研究の目的で、USDAと協力して開発培養困難な細胞への使用候補AlbuRich P15に、その他の栄養素を追加

※Boval社はProliant Health & Biologicals社が2019年に買収した、高品質なBSAを製造する企業です。

特に、コレステロールを添加したAlbuRich PRPは、培養が困難なレプトスピラ(Leptospira)や口蹄疫(Foot-and-Mouth Disease;FMD)ワクチンの開発に使用されています。レプトスピラは多くの菌株があり、USDA(アメリカ農務省)での培養において、これまでのBSAを使用した際よりも良好な結果が得られたという報告があります。

以下の製品紹介動画もご覧ください。

会社情報(お問い合わせ先)

会社名株式会社サンフコ
部署名バイオ営業部
住所東京都千代田区鍛冶町1-8-3神田91ビル8階
TEL03-3255-2460
FAX03-3255-0787
Websitehttps://www.sunfco.com/
E-mailbiosolutions_sales@sunfco.com

参考文献

  1. Francis GL.
    Albumin and mammalian cell culture: implications for biotechnology applications.
    Cytotechnology. 2010 Jan;62(1):1-16. doi: 10.1007/s10616-010-9263-3. Epub 2010 Apr 6. PMID: 20373019; PMCID: PMC2860567.
  2. Garcia-Gonzalo FR, Izpisúa Belmonte JC.
    Albumin-associated lipids regulate human embryonic stem cell self-renewal.
    PLoS One. 2008 Jan 2;3(1):e1384. doi: 10.1371/journal.pone.0001384. PMID: 18167543; PMCID: PMC2148252.
  3. Hiroyuki Sanjo and Takehiko Ogawa
    In vitro spermatogenesis using chemically defined media
    J. Mamm. Ova Res. Vol. 37 (1), 17–21, 2020