株式会社サンフコが販売する、BBI Solutions社製の「Horse Radish Peroxidase(HRP)」は、最も高い比活性を持つアイソザイムCを90%以上含む製品もある、70年以上の供給実績を誇るHRPです。
BBI SOLUTIONS社「Horse Radish Peroxidase(HRP)」
Horse Radish Peroxidase (HRP)とは?
Horse Radish Peroxidase (HRP、西洋ワサビペルオキシダーゼ)は、アブラナ科の西洋ワサビ(Horse Radish、Armoracia rusticana)の根から単離された酵素で、44 kDaの分子量を持つ糖タンパク質です。HRPは単一アミノ酸鎖で構成され、8つの糖鎖、1つのヘム基、2つのCa2+イオンが結合しています。このアミノ酸鎖には、他のタンパク質との結合や固定が可能な複数の官能基が含まれています。

Horse Radish Peroxidase (HRP)の特性と機能
HRPは、活性部位に存在するヘム基を介してペルオキシダーゼ(POD)活性を発揮します。ヘム基は、過酸化水素を水に変換する際に2つの電子を供与します。この反応によって生成される酵素―過酸化酵素複合体は、さまざまな水素供与体を酸化することができ、その結果としてDAB(3,3′-ジアミノベンジジン、3,3′-Diaminobenzidine)やTMB(3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン、3,3′,5,5′-Tetramethylbenzidine)などの発色基質や化学発光基質などを介した発色および化学発光を分析時のシグナルとして利用します。
Horse Radish Peroxidase (HRP)は遺伝子組換えで作ることができる?
HRPの遺伝子組換えによるリコンビナントタンパク質発現についてはこれまでに複数の試みが報告されていますが、大腸菌発現系では封入体(インクルージョンボディ)に含まれ、活性を示せず、リフォールディング工程が必要となるといった報告があります(1)。また無細胞タンパク質合成系を使用したHRP発現に関する研究と報告もありますが(2)、HRP構造の複雑性から、依然として商業用途では天然の西洋ワサビ根から精製されたHRPが主流となっています。
Horse Radish Peroxidase (HRP)の研究アプリケーションでの活用と歴史
研究現場におけるHRPの有用性に関する論文は1960年代中盤から見られます。抗原の局在を蛍光標識抗体で観察する際には、退色や非特異的蛍光が課題となっていましたが(3)、これに対処する方法として、HRPを抗体に標識した「HRP標識抗体」の利用とその有用性がNakaneらによって報告されました(4)。
HRPやアルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase、ALPまたはAP)などの酵素を用いた実験手法は、放射性物質を使用しないことから安全上の利点があります。さらに蛍光顕微鏡などの高価な顕微鏡を必要とせず、高感度で、操作も簡単であることからEIA(Enzyme Immuno-Assay)やELISA (Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay)など様々な実験アプリケーションへ展開・応用され、数々の研究の発展に大きく寄与しました(5)。さらに、HRPを抗体へ直接標識する場合よりもさらに高感度な検出を目的として、ビオチンと特異的に結合するストレプトアビジン(Streptavidin)にHRPを標識して検出する方法も開発され、現在にいたっています。
BBI Solutions社のストレプトアビジン・ポリストレプトアビジンとALPは、以下記事をご覧ください。
※こちらのストレプトアビジン・ポリストレプトアビジンにHRPは標識されていません。
BBI SOLUTIONS社のHorse Radish Peroxidase (HRP)
BBI Solutions社は研究や診断アプリケーション向けに、高いレベルの活性と純度、ロット間差が小さく、安定した性能を示す様々な酵素を60年以上に渡り業界へ一貫して提供しています。
BBI Solutions社のHRPの原料となる西洋ワサビは、南アフリカ産で、8~9月に播種、約9ヶ月栽培後、秋から春に収穫されます。収穫した根は加工まで冷凍保管されます。
西洋ワサビをなぜ南アフリカで栽培 ?
BBI社がHRP原料の西洋ワサビを南アフリカで栽培している理由は、大きく3つあります。
- 気候条件
南アフリカの一部高地は、冷涼・乾燥した温帯気候で昼夜の寒暖差が大きい環境であることから、
- 夏季平均気温が28℃以下と穏やかで、高温による酵素活性低下のリスクが低い
- 冬季の低温が西洋ワサビの休眠やHRP活性の向上に役立つ
- 安定した日照と適度な年間降水量が、栽培サイクルの安定に寄与
といった利点をもたらします 。このため、西洋ワサビ根部への栄養蓄積が促進されます。 - 土壌条件の優位性
南アフリカの農業地帯の土壌は排水性や通気性に優れています。また、pH 6.0〜7.2の中性に近い土壌が多く、塩害リスクも比較的小さいことから、HRP含量の高い西洋ワサビの根を収穫できます。 - 生産拠点としての運営安定性
中国東北部、ロシア南部、アメリカやブラジル南部など、西洋ワサビ栽培に適した地域は他にも存在します。BBI Solutions社は、洪水などの自然災害リスク、人件費、貿易条件、土地利用の自由度などの点から、南アフリカは高い競争力を有していると評価しました。南アフリカは干ばつ傾向にありますが、BBIは灌漑問題を解決し、安定供給を実現しています。
HRPを利用したアプリケーション
- HRPを抗体に標識し、免疫組織化学(Immunohistochemistry)やウエスタンブロット、ELISAなどの免疫化学的アプリケーションで使用
- HRPをアビジンやストレプトアビジンに標識し、上記の免疫化学的アプリケーションでの感度向上(増感)試薬として使用
- 抗原への標識
- 臨床化学試薬として、テストストリップなどに使用
BBI SOLUTIONS社HRPを使用する利点
- 70年以上の供給実績があります。
- 最も高い比活性を持つアイソザイムCを90%以上含んでおり(商品コードHRP4Bの場合)、他社製品と比較して高い割合となっています。
- 限外ろ過、沈殿、クロマトグラフィーによる精製で高品質な酵素を製造しています。
- 1日あたり2トン以上の西洋ワサビの根を加工し、最大7トン/日の加工に対応しているため、キログラムのHRPなど大容量へのご注文にも対応可能です。
- アプリケーションに応じて、様々なRheinheitzahl値(Rz)の製品をラインアップしています。標識アプリケーションには、Rz値が3.0より大きい製品を推奨しています。
※Rheinheitzahlは活性とは関係なく、純度を表す数値です。ペルオキシダーゼ中のヘムの吸収極大(λmax)403 nmをタンパク質量(275 nm)で割った値で、ペルオキシダーゼの純度を求めます。 - 非特異的吸着によるバックグラウンドが問題となるアッセイ用に、ヘム基が除かれた不活性なペルオキシダーゼ(Apo Peroxidase、アポペルオキシダーゼ)も提供しています。
BBI SOLUTIONS社 HRP製品情報
| 商品コード | 品名 | 活性 | Rz値 (OD403/OD275): | アプリケーション | 保存温度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 161451BBI | Peroxidase | ≥ 250 U/mg | ≥ 3.0 | イムノアッセイ/バルク | 冷凍 |
| 161453BBI | Peroxidase | ≥ 100 U/mg | ≥ 1.0 | 臨床化学/バルク | 冷凍 |
| 161455BBI | Peroxidase | ≥ 60 U/mg | ≥ 0.6 | 臨床化学/バルク | 冷凍 |
| 161457BBI | Peroxidase | ≥ 200 U/mg | 2.0-4.0 | 臨床化学/バルク | 冷凍 |
| 161470BBI | Peroxidase | ≥ 150 U/mg | ≥ 1.5 | 臨床化学 | 冷凍 |
| HRP3C | Peroxidase | ≥ 150 U/mg | > 2.0 | 臨床化学 | 冷凍 |
| HRP4 | Peroxidase | ≥ 250 U/mg | > 3.0 | CLIA, ELISA, 免疫組織化学染色(IHC), ウエスタンブロッティング | 冷凍 |
| HRP4B | Peroxidase | ≥ 250 U/mg | > 3.0 | CLIA, ELISA, 免疫組織化学染色(IHC), ウエスタンブロッティング | 冷凍 |
| HRP4C | Peroxidase | ≥ 250 U/mg | > 3.0 | 臨床化学/尿テストストリップ | 冷凍 |
| HRP5 | Peroxidase | ≥72U/mg | およそ3.5 | ブロッキング阻害 (CLIA, ELISA, 免疫組織化学染色(IHC), ウエスタンブロッティング) | 冷凍 |
| APO/HRP4C | APO Peroxidase | < 0.05 | ブロッキング阻害 (CLIA, ELISA) | 冷凍 | |
参考文献
- Smith AT, Santama N, Dacey S, Edwards M, Bray RC, Thorneley RN, Burke JF. Expression of a synthetic gene for horseradish peroxidase C in Escherichia coli and folding and activation of the recombinant enzyme with Ca2+ and heme. J Biol Chem. 1990 Aug 5;265(22):13335-43. PMID: 2198290.
- Park YJ, Kim DM. Production of Recombinant Horseradish Peroxidase in an Engineered Cell-free Protein Synthesis System. Front Bioeng Biotechnol. 2021 Oct 27;9:778496. doi: 10.3389/fbioe.2021.778496. PMID: 34778239; PMCID: PMC8579056.
- Borek F. The fluorescent antibody method in medical and biological research. Bull World Health Organ. 1961;24(2):249-56. PMID: 20604086; PMCID: PMC2555496.
- Nakane PK, Pierce GB Jr. Enzyme-labeled antibodies for the light and electron microscopic localization of tissue antigens. J Cell Biol. 1967 May;33(2):307-18. doi: 10.1083/jcb.33.2.307. PMID: 6046571; PMCID: PMC2108346.
- Hoshino N, Nakajima R, Yamazaki I. The effect of polymerization of horseradish peroxidase on the peroxidase activity in the presence of excess H2O2: a background for a homogeneous enzyme immunoassay. J Biochem. 1987 Oct;102(4):785-91. doi: 10.1093/oxfordjournals.jbchem.a122116. PMID: 3325503.
会社情報(お問い合わせ先)
| 会社名 | 株式会社サンフコ |
| 部署名 | バイオ営業部 |
| 住所 | 東京都千代田区鍛冶町1-8-3神田91ビル8階 |
| TEL | 03-3255-2460 |
| FAX | 03-3255-0787 |
| Website | https://www.sunfco.com/ |
| biosolutions_sales@sunfco.com |






