ELISA(酵素免疫測定法,Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)で,吸光度データをマイクロプレートリーダーで取得した後は解析を行います。
段階希釈したスタンダードの吸光度(O.D.)から標準曲線(検量線,スタンダードカーブ,Standard Curve)を作成して,サンプルの濃度を求めます。
標準曲線の作成とサンプル濃度の計算はマイクロプレートリーダー付属のソフトウェアで自動的に行ってくれることも多いですが,ソフトウェアが最新OSに対応していなかったり,古めのマイクロプレートリーダーを使用している場合には,自分でデータをExcelなどのソフトに入力して標準曲線を作る必要があります。
標準曲線(検量線)の作り方の種類
標準曲線(検量線)の作り方は
- 線形近似(Linear)
- 4パラメーターロジスティック曲線(4 parameter logistic curve)
- 5パラメーターロジスティック曲線(4 parameter logistic curve)
などがあります。
どの方法を取るかは様々な考え方がありますが,ELISAにおいては,「4パラメーターロジスティック曲線(4 parameter logistic curve)」の使用が推奨されていることが多いです。
4パラメーターロジスティック(4PL)曲線とは?
4パラメーターロジスティック(4PL)曲線 とは,4つのパラメーター(a, b, c, d)を用いて下記の式で求められるシグモイド曲線です。
画像のキャプションに書いてある各パラメーターのことを読んでも,統計に詳しい人でなければおそらくピンと来ないと思います。そしてこの時点でアレルギーが出る人も・・・。
ただ,ここではこの数式について詳しく知る必要は無く,標準曲線から濃度が求められれば良いので,説明は省略します。
とにかく,この数式から4PL曲線を作ることになります。さてどうやって作りますか?エクセルにしますか?
4PL曲線はエクセル(Excel)で作れないの?
結論から言えば,「可能」です。
ただし,これをするにはエクセルの「ソルバー」機能に精通している必要があります。それでも結構複雑で,おそらく初心者の方には難易度が高いでしょう・・・。
オンラインツールで4PL曲線を「楽に」作ろう!
エクセルで作るのが難しいのであれば,どうしたらよいのでしょう?
なんと,今はオンラインで4PL曲線が楽に作成できて,データも求められるのです!
それでは,ここからは4PL曲線を作成できるオンラインツールをご紹介します。
※ 得られたデータの正確性につきましては,各自のご責任の下でご利用ください。
GainData ® (arigo Biolaboratories社)
高品質な抗体,リコンビナントタンパク質,ELISAキットを販売する,arigo Biolaboratories社(日本国内代理店:フナコシ株式会社)が提供するオンラインツールが,GainData®。
グラフィカルなユーザーインターフェース(UI)で直感的に使用でき,WordやExcel,CSV形式の生データから数値をペーストしてデータを求めることが可能。使用方法の動画もあり,初心者にも安心。
さらにエクセルやPDFでデータを出力することもでき,便利。なおPDFデータには4PL曲線が表示されるがエクセルデータには表示されないので注意。
特筆すべき点としては,4PLだけでなく5PLと線形近似にも対応していること。
登録不要,無料で使用できるツールとしては最高の完成度。
リンクはこちら:GainData ELISA data calculator | free ELISA data analyzer -arigobio – arigo Biolaboratories
Image and Video : arigo Biolaboratories
Four Parameter Logistic (4PL) Curve Calculator (AAT Bioquest社)
多くの蛍光プローブ,アッセイキットを扱うAAT Bioquest社(日本国内代理店:コスモ・バイオ株式会社,ナカライテスク株式会社)が提供するのが,Four Parameter Logistic (4PL) Curve Calculator (AAT Bioquest社)。
「How to use this tool」に書かれている通りにエクセルでデータを作り,「Data Entry」ペーストして進めていくだけでデータとグラフが作成できる。
できあがったデータの他フォーマットへの出力機能は無い様子。
リンクはこちら:Four Parameter Logistic (4PL) Curve Calculator | AAT Bioquest
MyAssays (MyAssays社)
NASAやMIT,CDCといった錚々たるクライアントを抱え,著名なキットメーカーからも推薦されている「MyAssays」。オンライン版とデスクトップ版がある。今のところ,オンライン版は無料で使用できる。デスクトップ版は有料。
グラフィカルなユーザーインターフェースで,4PLだけでなく5PLにも対応。希釈係数の考慮もでき,エクセルへの出力も可能。なおエクセルデータにも4PL曲線が表示される。
ただし,オンライン版使用にあたっては(現在のところ)無料の登録が必要。提供するのはメールアドレス,およびログイン用に設定するパスワード程度だが,提供に抵抗がある人には向かないだろう。
リンクはこちら:MyAssays – Data Analysis Tools and Services for Bioassays
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分でエクセルを操作し自動計算ツールを作るよりは,これらオンラインツールを使えば簡単にデータを求めることができます。
おそらく,今回ご紹介した中では arigo Biolaboratories社 の GainData® が最も使いやすいでしょう。
このツールを使用して,データの解析をよりスピーディーに完結させてみてはいかがでしょうか。
それでは。