cancer and bone


がんは原発部位から様々な臓器・器官に転移し、拡大していくことがあります。
中でも「骨」は、固形腫瘍において最も好発する転移部位の一つで、世界では150万人以上のがん患者が骨転移に苦しんでいるとも報告されています(1)。骨転移により、進行がんの患者では生活の質が著しく低下する他、骨が脆くなることでの骨の痛み、骨折、死亡率増加に寄与することもあります(2)。

今回の記事では、「がん」と「骨」の、その密接な関係について概要をまとめています。

オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)は、各種バイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
Biomedica社のELISAキットは、国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。世界中でご利用頂いており、1,500本以上の文献で使用されています。

優れた品質を誇る、Biomedica社の測定キットをぜひご利用ください。
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

骨の機能と細胞の種類

骨には、構造支持、動作、血球生成およびミネラルの貯蔵といった多くの重要な機能があります(3)。私たちの組織は、骨機能と健康を調節する様々な細胞で構成されており、主に以下のような細胞が関与しています。

・骨芽細胞-新しい骨を作る、骨形成細胞
・破骨細胞-骨を分解・吸収する細胞
・骨細胞-機械的荷重を感知、骨のリモデリングプロセスを監視する骨細胞

「がん」と「骨」 - 骨転移の好発ターゲット

ある種のがんにおいて、骨は転移の好発ターゲットとなっています。特に、乳房、肺、前立腺、腎臓、卵巣、および甲状腺のがんは、骨に広がる可能性があります(4)。

「がん」とRANK/RANKL/OPGシステム

RANK/RANKL/OPG系(NFκBリガンド/ Osteoprotegerinの受容体活性化因子)は20年以上前に発見され、今も「ホットなトピック」であり続けています。受容体とリガンドのコンビ、RANKとRANKLは、骨代謝および破骨細胞発達の非常に重要な調節因子です。Osteoprotegerin(OPG)はRANKLのデコイ受容体で、RANKLと競争的に結合して、RANKL-RANK相互作用に干渉し、骨吸収をブロックします。骨リモデリング調節因子の役割としてだけでなく、RANK/RANKL/OPG系は、乳がんや前立腺がん、白血病の進行に関係するともされており、腫瘍細胞の発達に直接、影響します(5-7)。

ヒトの「がん」におけるRANK/RANKLシグナル伝達の阻害

RANKL活性を中和する目的で完全ヒト化モノクローナル抗体が開発され、骨転移を含む骨減少疾患の治療に承認されています。抗体はRANKシグナル伝達を阻害し、破骨細胞の活性化を防ぎ、骨吸収を抑制します(5-7)。最近では、RANKLシグナル伝達の阻害は、抗腫瘍反応に影響を与える可能性がある、重要なチェックポイントとして認識されています。そのため、RANKLの阻害は骨転移へ直接的に影響します。現在、この新たな治療戦略は、臨床および実験的試験で評価されています(8)。

OPGとRANKLの臨床試験における測定

血清中のOPGとRANKL濃度は、ELISAで測定できます。非転移性乳がん患者のRANKL/OPG血清レベルと散在性腫瘍細胞の予後の値を調査した一つの研究があります(9)。BRCA1変異を持つ女性の乳がんリスクマーカーとしてのOsteoprotegerinの役割が、最近のレビューでハイライトされています。著者らは、OPGレベルが乳がんリスクの潜在的なマーカーとして役立つ可能性を示しました。OPGは疾患にかかるリスクを持つ女性を特定することで、現在までのリスク予測モデルを強化できます(10)。

Biomedica社キットの特長

  • オーストリア・Biomedica社で製造開発されており、高品質なアッセイです。
  • 450報以上の使用文献があります。
  • FDA/ICH/EMEAの国際的な品質ガイドラインに沿ってキットのバリデーションを行っており、完全に検証済みです。

ヒトOsteoprotegerin (OPG) ELISAキット

Osteoprotegerin(OPG)は、骨を合成する細胞である骨芽細胞で産生されます。OPGはデコイ受容体としてRANKLに結合し、RANKとの結合と拮抗します。

  • 商品コード:BI-20403
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、ヘパリン血漿、クエン酸血漿
  • サンプル量:20 µl / well
  • 感度:0.07 pmol/l (= 1.4 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 20 pmol/l (= 0 – 400 pg/ml)
  • 交差性:ラット、マウスには交差しない。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

ヒトsoluble free RANKL (sRANKL) ELISAキット

RANKL(receptor activator of nuclear factor kappa-B ligand)は骨芽細胞から分泌され、破骨細胞前駆体と成熟破骨細胞上のRANK受容体と結合します。RANKLは骨吸収を刺激します。

  • 商品コード:BI-20462
  • サンプル種:血清、ヘパリン血漿
  • サンプル量:150 µl / well
  • 感度:0.01 pmol/l (= 0.2 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 2 pmol/l (= 0 – 40 pg/ml)
  • 交差性:様々な霊長類とヒトの間では、配列の相同性が>95%。これらの種では交差する可能性がある。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

その他関連ELISAキット

ヒトDickkopf-1(DKK-1)ELISAキット

Dickkopf-1(DKK-1)は細胞外タンパク質で、骨代謝を調節しています。またWntシグナル伝達経路の分泌型インヒビターです。DKK-1は骨芽細胞の分化阻害、すなわち骨形成を阻害します。DKK-1の調節不全はがんの進行をもたらすことがあります。

  • 商品コード:BI-20413
  • サンプル種:血清
  • サンプル量:20 µl / well
  • 感度:1.7 pmol/l (= 43.0 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 160 pmol/l (= 0 – 4,103 pg/ml)
  • 交差性:ヒトDKK-2、DKK-4、Kremen-1、Kremen-2やLRP-6には交差・阻害しない。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

ヒトSclerostin

Sclerostin(SOST)は主に骨細胞で産生され、骨形成の主要な調節物質と考えられています。またWntシグナル伝達経路の可溶性アンタゴニストであるため、この経路の不活性により、骨の分解が起こります。

  • 商品コード:BI-20492
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:20 µl / well
  • 感度:3.2 pmol/l (= 72 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 240 pmol/l (= 0 – 5,400 pg/ml)
  • 交差性:Wise (Sostdc1) やNogginには交差しない。またラットやマウスのSclerostinには交差しない。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

ヒトIL-6 ELISAキット

Interleukin-6 (IL-6)は、B-cell stimulatory factor 2 (BSF-2)、CTL differentiation factor (CDF)あるいはHybridoma growth factor or Interferon beta-2 (IFN-beta-2)として知られています。感染や組織損傷、生体防御において主要な役割を果たしています。

  • 商品コード:BI-IL6
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:100 µl/well
  • 感度:検出限界:0.28 pg/ml(定量下限:0.78 pg/ml ※血清・血漿サンプル)
  • 標準曲線範囲:0 – 200 pg/ml
  • バリデーションデータ:こちらをご覧ください。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社

ヒトVEGF ELISAキット

Vascular endothelial growth factor (VEGFまたはVEGF-A)は、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、血小板、マクロファージ等、様々な細胞から分泌される成長ホルモンです。現在までに17のアイソフォームが同定されていますが、受容体結合に関与するN末端領域は全てのアイソフォームで保存されており、性質とタンパク質長を変えるC末端はアイソフォーム間で違いが見られます。

  • 商品コード:BI-VEGF
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:10 µl/well
  • 感度:検出限界:2.5 pg/ml(定量下限:15.6 pg/ml ※血清・血漿サンプル)
  • 標準曲線範囲:0 – 2,000 pg/ml
  • バリデーションデータ:こちらをご覧ください。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」

ヒトAngiopoietin-2 ELISAキット

Angiopoietin-2 (ANG2)は、分子量56.9 kDaのグリコシル化成長因子で、内皮細胞に特異的です。ANG2は胚血管で発現し、新しい血管系の形成に寄与しています。

  • 商品コード:BI-ANG2
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量: 20 µl/well
  • 感度:検出限界:3.7 pmol/l (= 203 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 400 pmol/l (= 0 – 21,960 pg/ml)
  • バリデーションデータ:こちらをご覧ください。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

製品に関する日本でのお問い合わせ先

Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。

製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp

までお問い合わせください。

参考文献

  1. Cancer to bone: a fatal attraction.
    Weilbaecher KN et al., Nat Rev Cancer. 2011.
  2. Bone metastasis: mechanisms, therapies, and biomarkers.
    Clézardin P et al., Physiol Rev. 2021.  
  3. Biology of Bone Tissue: Structure, Function, and Factors That Influence Bone Cells.
    Florencio-Silva R et al., Biomed Res Int. 2015.
  4. Bone as a Preferential Site for Metastasis.
    Sowder ME et al., JBMR Plus. 2019.  
  5. The Roadmap of RANKL/RANK Pathway in Cancer.
    Casimiro S et al., Cells. 2021.  
  6. RANKL biology: bone metabolism, the immune system, and beyond.
    Ono T et al., Inflamm Regen. 2020.
  7. RANKL and RANK in Cancer Therapy.
    Onji M and Penninger JM. Physiology (Bethesda). 2023.  
  8. The Role of the RANKL/RANK Axis in the Prevention and Treatment of Breast Cancer with Immune Checkpoint Inhibitors and Anti-RANKL.
    Simatou A et al., Int J Mol Sci. 2020.  
  9. Prognostic Value of RANKL/OPG Serum Levels and Disseminated Tumor Cells in Nonmetastatic Breast Cancer.
    Rachner TD et al., Clin Cancer Res. 2019.  
  10. Delineating the role of osteoprotegerin as a marker of breast cancer risk among women with a BRCA1 mutation.
    Park SS et al., Hered Cancer Clin Pract. 2022.  

会社情報

会社名Biomedica Medizinprodukte GmbH
部署名
住所Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria
TEL+43 12910745
FAX
Websitehttps://www.bmgrp.com/
E-mailinfo@bmgrp.com