急性腎障害や慢性腎臓病など、腎臓の疾患に関わるバイオマーカーは、腎臓病患者の重症度・予後・治療に対する反応の評価の指標となります。長年に及ぶこれまでの徹底した研究は、腎機能障害の早期発見を目的とした良好なバイオマーカー候補の特定につながっています。
今回の記事では、腎臓病の新しいバイオマーカーについての概要をまとめています。
オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)は、各種バイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
Biomedica社のELISAキットは、国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。世界中でご利用頂いており、1,500本以上の文献で使用されています。
優れた品質を誇る、Biomedica社の測定キットをぜひご利用ください。
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
VANIN-1:急性腎障害および薬剤性腎障害
腎臓で高発現しているVascular non-Inflammatory Molecule-1 (Vanin-1)は、新しいバイオマーカーの一つです(1, 2)。Vanin-1は急性腎障害と薬剤性腎障害のマーカーとして提唱されており(3, 4)、I型糖尿病性腎症のラットモデルで立証されているように、腎臓の傷害に関わっています(5)。
Vanin-1の詳細については、こちらの記事もご参照ください。
ヒト尿中Vanin-1 ELISAキット
- 商品コード:BI-VAN1U
- サンプル種:尿
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:9.6 pmol/l (= 500 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 1200 pmol/l (= 0 – 62,500 pg/ml)
- 交差性:マウスVanin-1には交差しない。様々なサルのVanin-1には交差する可能性があります。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
マウス・ラット尿中Vanin-1 ELISAキット
- 商品コード:BI-VAN1MR
- サンプル種:血清、血漿、尿
- サンプル量:5 µl / well
- 感度:2.31 pmol/l
- 標準曲線範囲:0 – 200 pmol/l (= 0 – 10.6 ng/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
ENDOSTATIN:腎線維症、慢性腎臓病(CKD)および急性腎障害(AKI)の予後マーカー
Endostatinは細胞外マトリックスのタンパク質で、腎線維症が進行している患者で発現しています。血清Endostatinレベルの顕著な増加は、慢性腎臓病患者における細胞外マトリックス分解亢進によるものと考えられています(6, 7)。Endostatinはまた、急性腎障害患者の予後マーカーとしても研究されています(8)。
Endostatinは血清、血漿および尿サンプルを用いて、ELISAで定量できます。
ヒトEndostatin ELISAキット
- 商品コード:BI-20742
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:20 µl / well
- 感度:4 pmol/l (= 80 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 800 pmol/l (= 0 – 16,000 pg/ml)
- 交差性:ヒトEndostatinのみ。 COL15A1には交差しない。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
マウス・ラットEndostatin ELISAキット
- 商品コード:BI-20742MR
- サンプル種:血清、血漿
- サンプル量:5 µl / well
- 感度:0.24 nmol/l (= 4.9 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 32 nmol/l (= 0 – 653 ng/ml)
- 交差性:マウス、ラットEndostatinのみ。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
FGF23:心疾患患者の心血管イベント予測因子
内分泌ホルモンのFGF23(Fibroblast Growth Factor 23)は、腎リン酸再吸収を調節することでリン酸の恒常性を調節しています。循環FGF23は腎機能低下と共に上昇し、高レベルのFGF23とリン酸は心血管疾患と死亡率に関連しています(9, 10)。
FGF23については、以下の記事もご参照ください。
FGF23(Intact)
- 商品コード:BI-20700
- サンプル種:血清、血漿(EDTA、クエン酸、ヘパリン)、尿、細胞培養上清
- サンプル量:50 µl / well
- 感度:0.21 pmol/l (=5.4 pg/ml )
- 標準曲線範囲:0 – 60.8 pmol/l (=0 – 1,600 pg/ml)
- 交差性:FGF3、FGF19、FGF21には交差しない。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
FGF23 (C末端)
- 商品コード:BI-20702
- サンプル種:血清、血漿(EDTA、クエン酸、ヘパリン)
- サンプル量:50 µl / well
- 感度:0.08 pmol/l (= 0.6 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 20 pmol/l (= 150.4 pg/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
PERIOSTIN:尿細管障害の潜在的早期バイオマーカー
Periostinはマトリクス細胞のタンパク質で、組織リモデリングと創傷治癒に関与しています。腎臓におけるPeriostinの発現は、間質性線維症と腎機能低下の程度に相関していることが、研究で立証されています(11)。
尿中Periostinレベルの上昇は、微量アルブミン尿発症前にII型糖尿病が存在していた患者で発見されました。著者らは尿中Periostinが尿細管障害の早期バイオマーカーとなりうることを提唱しています(12)。
Periostinは血清、血漿、尿サンプルを用いて、ELISAで定量できます(13)。
Periostinについては、以下の記事もご参照ください。
ヒトPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:20 pmol/l (= 1,800 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 4,000 pmol/l (= 0 – 360,000 pg/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
マウスPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433MS
- サンプル種:血清、血漿
- サンプル量:≤ 5 µl / well
- 感度:0.003 nmol/l (= 0.27 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 16 nmol/l (= 0 – 1,400 ng/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
C4d:腎移植レシピエントでの抗体介在性拒絶反応
補体切断産物のC4dは、腎臓移植における急性抗体介在性拒絶反応の診断で、特異的なマーカーであることが明らかになっています(14, 15)。
·Anti-C4d Antibody | BI-RC4D
·Anti-C4d Antibody (FITC) | BI-RC4D-FITC
抗ヒトC4d抗体(未標識)
- 商品コード:BI-RC4D
- 適用:パラフィン切片、凍結切片
- 免疫動物:ウサギ (ポリクローナル抗体)
- 精製:Protein Gクロマトグラフィー
- 免疫原:合成ペプチド(C4のアミノ酸残基1242-1256に相当の15mer)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
- 染色画像:
抗ヒトC4d(FITC標識)
- 商品コード:BI-RC4D-FITC
- 適用:FlowPRA(One Lambda社製品)を用いた検出で使用
- 免疫動物:ウサギ (ポリクローナル抗体)
- 精製:Protein Gクロマトグラフィー
- 免疫原:合成ペプチド(C4のアミノ酸残基1242-1256に相当の15mer)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 染色画像:FlowPRAでの使用例
Biomedica社キットの特長
- オーストリア・Biomedica社で製造開発されています。
- 多くのトップジャーナルでの使用文献があります。
- FDA/ICH/EMEAの国際的な品質ガイドラインに沿ってキットのバリデーションを行っており、完全に検証済みです。
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
製品に関する日本でのお問い合わせ先
Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。
製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp
までお問い合わせください。
参考文献
- Pantetheinase activity of membrane-bound Vanin-1: Lack of free cysteamine in tissues of Vanin-1 deficient mice.
Pitari G et al., FEBS Lett. 2000, 483, 149–154. - Is bigger better: Determining nephron size in kidney. Wessely O et al., Pediatr Nephrol. 2014, 29, 525–530.
- Monitoring changes in gene expression in renal ischemia-reperfusion in the rat. Yoshida T et al., Kidney Int. 2002, 61, 1646–1654.
- Urinary Vanin-1 As a Novel Biomarker for Early Detection of Drug-Induced Acute Kidney Injury. Hosohata K et al., J Pharm Exp Ther. 2012, 341, 656–662.
- Proteomic identification of vanin-1 as a marker of kidney damage in a rat model of type 1 diabetic nephropathy. Fugmann T et al.,Kidney Int. 2011, 80, 272–281.
- A defective angiogenesis in chronic kidney disease. Futrakul N et al., 2008. Ren Fail. 30, 215–217.
- Endostatin in Renal and Cardiovascular Diseases. Li M et al., Kidney Dis (Basel). 2021, 9;7(6):468-481.
- Prognostic value of dynamic plasma endostatin for the prediction of mortality in acute kidney injury: A prospective cohort study. Jia HM et al., J Int Med Res. 2020, 48(7):300060520940856.
- Higher fibroblast growth factor-23 increases the risk of all-cause and cardiovascular mortality in the community. Ärnlöv J et al., Kidney Int. 2013, 83(1):160-6.
- Fibroblast growth factor-23, cardiovascular prognosis, and benefit of angiotensin-converting enzyme inhibition in stable ischemic heart disease. Udell JA et al., J Am Coll Cardiol. 2014, 10;63(22):2421-8.
- Periostin in the Kidney. Wallace DP et al., Adv Exp Med Biol. 2019, 1132:99-112.
- Periostin as a tissue and urinary biomarker of renal injury in type 2 diabetes mellitus. Satirapoj B et al., PLoS One. 2015, 17;10(4):e0124055.
- Characterization of a sandwich ELISA for the quantification of all human periostin isoforms. Gadermaier E et al., J Clin Lab Anal. 2018, 32(2):e22252.
- Arteriolar C4d in IgA Nephropathy: A Cohort Study. Faria B et al., Am J Kidney Dis. 2020, 76(5):669-678.
- Response to treatment and long-term outcomes in kidney transplant recipients with acute T cell-mediated rejection. Bouatou Y et al., Am J Transplant. 2019, 19(7):1972-1988.
会社情報
会社名 | Biomedica Medizinprodukte GmbH |
部署名 | |
住所 | Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria |
TEL | +43 12910745 |
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