厚生労働省発表のデータによると,日本人の「がん」死亡数のうち,大腸がん(結腸+直腸がん)は,がん全体のうち2番目に多い死因のがんです。(※)
オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下,Biomedica社)では,これらバイオマーカーの測定に有用な,研究用のELISAキットを数多く取り揃え,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
血管新生に関与するAngiopoietin-2は,腎臓病や心臓病の関連タンパク質とされていますが,近年は大腸がんのバイオマーカー候補としての報告もあります。
今回はAngiopoietin-2と大腸がんについての関係に焦点を当ててご紹介します。
※2019年のデータ。出典:厚生労働省ウェブサイト「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
Angiopoietin-2(ANG2)とは?
Angiopoietin-2(ANG2)は56.9 kDaのグリコシル化された成長因子で,内皮細胞(ECs)に発現しています。
発生においては,ANG2は胚血管(embryonic vessel)で発現しており,血管新生に寄与しています。
成人では,血管の再構築(例:卵巣,子宮,胎盤)や創傷治癒の部位での発現に制限されています。
ANG2はサイトカインであるVascular endothelial growth factor (VEGF)によって調節されており,またVEGFと共に内皮細胞の遊走,増殖,そして血管形成を誘導します。
ANG2は血管新生において,angiopoietin-1/TIE2受容体シグナル伝達システムにより内皮細胞へ影響を及ぼします。シグナル伝達が阻害されると内皮の健全な状態が損なわれ,その結果,様々な前炎症性サイトカインと成長因子に対して反応するようになります。したがってANG2は慢性腎臓病(CKD)患者での血管微小炎症を起こす可能性があります。様々な研究によれば,ANG2レベルがCKDのステージと共に上昇し,体液過剰や異常な心臓構造に関連するとも示唆されています。
さらに,ANG2濃度はCKDステージ4~5の患者の死亡率にも関連しています。ANG2レベルは腎臓移植が成功すれば正常に戻りますが,CDKステージ4~5の患者では引き続き血管系のリスク因子となり得ます。
がんでは,TIE2-Angiopoietin経路をターゲットとして,前臨床や臨床試験において,再発あるいは転移性の乳がんや腎細胞がんを対象に有望な結果が見られています。
2019年からのパンデミックであるCOVID-19(新型コロナウイルス)患者では,ANG2は低い肺コンプライアンスと関連し,ICUに運び込まれる可能性予測の関連因子となりうることが報告されています。これは内皮細胞活性化はCOVID-19関連の微小血管機能障害を促進するという仮説の裏付け強化につながります。
これに関連し,ANG2レベルは重度COVID-19患者での重症度,凝固促進や死亡率と関連することが示唆されています。
研究者はさらに,in vivoにおけるANG2の凝固への直接的な役割として,トロンボモジュリンへの結合およびトロンボモジュリン介在性抗凝固阻害が関係していることを示しました。そしてANG2阻害による方法が,重症COVID-19患者や凝固促進患者の治療に有用であることを示唆しています。
その他,ANG2が関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
ANG2と大腸がんとの関係
がんにおいて使われる「化学療法抵抗性」という言葉は,化学療法に無反応であるがんのことを指しています。
これまで化学療法抵抗性の切除不能大腸がんに対して,化学療法の効果予測に使用可能なバイオマーカーはありませんでした。
ところが最近の研究によると,イタリアの研究者らは循環型Angiopoietin-2 (ANG2)レベルが経口マルチキナーゼ阻害薬であるregorafenib(レゴラフェニブ)投与では早期に上昇するものの,抗悪性腫瘍剤のトリフルリジン/チピラシルではそれらが生じないことを報告しました。
この結果,ベースラインの血漿中ANG2レベルは,化学療法抵抗性の切除不能大腸癌の独立した予測バイオマーカーとなる可能性を示唆しました。
詳細は文献:Early modulation of Angiopoietin-2 plasma levels predicts benefit from regorafenib in patients with metastatic colorectal cancerをご覧ください。
Biomedica社とは?
Biomedica社は1988年に設立されました。30年以上に渡るイムノアッセイ製造開発の経験と実績から,高品質な製品とレベルの高い技術サポートを提供しており,製薬会社・研究施設・CROを含め,世界中の多くの研究者にBiomedica社の製品が愛用されています。
Biomedica社は研究者の皆様のご要望にお応えするため. 多くの研究者や医師と密接にコラボレーションし. 製品の開発を行っています。
Biomedica社ヒトAngiopoietin-2 (ANG2) ELISAキットの特長
※日本では「研究用」試薬として販売されています。
- 正確性:製品はFDA/ICH/EMEAのガイドラインに沿ったバリデーション(検証)をしっかりと行い,データの正確性を高めています。
- アッセイは臨床サンプルに最適化されています。
- 少ないサンプル量(1ウェルあたり20 μL)で測定できます。
- ヒトANG2の全てのisoform(アイソフォーム)を検出できます。
- Angiopoietin-1(ANG1)には交差しません。
- キットにはReady-to-useのスタンダードとコントロールが含まれています。
- 商品コード:BI-ANG2
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
参考文献
Early modulation of Angiopoietin-2 plasma levels predicts benefit from regorafenib in patients with metastatic colorectal cancer.
Antoniotti C, Marmorino F, Boccaccino A, Martini S, Antista M, Rossini D, Zuco V, Prisciandaro M, Conca V, Zucchelli G, Borelli B, Cosentino P, Germani MM, Bosco MF, Carullo M, Vetere G, Moretto R, Giordano M, Masi G, Pietrantonio F, Zaffaroni N, Cremolini C.
Eur J Cancer. 2022 Apr;165:116-124. doi: 10.1016/j.ejca.2022.01.025. Epub 2022 Feb 26. PMID: 35231767.
Angiopoietin-2 as a Prognostic Factor in Patients with Incurable Stage IV Colorectal Cancer. J Gastrointest Cancer.
Munakata S, Ueyama T, Ishihara H, Komiyama H, Tsukamoto R, Kawai M, Takahashi M, Kojima Y, Tomiki Y, Sakamoto K.
J Gastrointest Cancer. 2021 Mar;52(1):237-242. doi: 10.1007/s12029-020-00392-1. PMID: 32166589.
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Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。
製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp
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