CNP-Bone-Growth


骨の成長は、縦方向(長さ)だけでなく、横方向(厚み、直径)にも生じ、これらは複雑なプロセスによって成り立っています。近年の研究で、心毒性バイオマーカーの「ナトリウム利尿ペプチド」の1種、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が骨の成長に関与していることが報告されています。
今回の記事では、骨の成長に関与している「CNP」に焦点を当て、特集します。

オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)は、各種バイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
Biomedica社のELISAキットは、国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。世界中でご利用頂いており、1,500本以上の文献で使用されています。

優れた品質を誇る、Biomedica社の測定キットをぜひご利用ください。

ナトリウム利尿ペプチドとは?

ナトリウム利尿ペプチドは、ナトリウムと血圧調節において中心的な役割を果たすペプチドで、これまでに以下の3種類が見つかっています。

  • ANP:Atrial Natriuretic Peptide (心房性ナトリウム利尿ペプチド)
  • BNP:Brain Natriuretic Peptide (脳性ナトリウム利尿ペプチド)
  • CNP:C-type Natriuretic Peptide (C型ナトリウム利尿ペプチド)

それぞれの前駆体が分解酵素で切断されると、生物学的に活性のあるナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP、CNP)が生じますが、同時にそれぞれNT-pro ANP、NT-pro BNP、およびNT-pro CNPと言われる不活性なペプチドも生じます。
これらの違いについての詳細は、下記記事もご覧ください。

C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)とは?

CNPは心血管、脳、および内皮を含む、様々な組織で広く発現するパラクラインホルモンであり、血圧、水分ミネラルバランス、および多くの代謝プロセスを調節しています(1)。
ヒトにおけるCNPの重要な役割の一つに、破骨細胞活性の強力な活性化因子で、骨リモデリングの潜在的な局所調節因子としての役割があります(2)。
CNPは、コラーゲンおよび細胞外マトリクスの産生に関与し、特化した細胞「軟骨細胞」によって関節の軟骨で主に産生されます。
そのためCNPは、成長板骨格軟骨において、発達する骨格の軟骨成長を促進する重要な役割を担っています(3,4)。

骨はどのように成長する?

骨の成長は、体全体の骨組織の形成とリモデリングが関与する複雑なプロセスによって生じています。
このプロセスは、骨格の健康と機能維持に共同して働く様々なホルモン、成長因子、およびシグナル伝達経路によって調節されています。

骨の成長には、主に以下の2種類があります。

縦方向の成長は、大腿骨や脛骨のような長骨で起こります。主に小児期・青年期に骨の長さが成長するプロセスで、骨の長端にある軟骨領域の「成長板(Growth Plate)」によって促進されます。成長板中の軟骨は、骨が長く成長するにつれて徐々に骨化、または骨組織に変わります。

付加成長は、骨の厚み、または直径における成長プロセスです。この種類の成長は生涯に渡って生じており、骨芽細胞(Osteoblast)と呼ばれる骨構築細胞と、破骨細胞(Osteoclast)と呼ばれる骨吸収細胞の働きのバランスによって調節されています。

遺伝、栄養、運動、およびホルモンバランスなど、骨の成長には複数の要因が影響を与えている可能性があります。例えば、成長ホルモンと性ホルモンは、骨の成長と発達を調節する重要な役割を果たしています。
この内、骨の成長を調節する必須のホルモンが、CNPです。

ヒト血液サンプル中のCNPとNT-proCNP

生物学的に活性のあるCNP分子は、骨の成長における動的な役割がありますが、その急速なクリアランスと低血中濃度により、直接の測定が困難です。
しかし、成長板で合成される不活性型前駆体分子(アミノ末端プロペプチド NT-proCNP)は、長い半減期を持ち、CNPと等モル濃度で循環しています。そのためNT-proCNPは、骨におけるCNPの役割の研究において理想的なバイオマーカーの候補とされています(1,3)。
ヒト血液サンプル中のCNPとNT-proCNPの比較測定を実施した研究では、NT-proCNPの方が一貫性と信頼性があり、臨床用途で望ましい方法であると報告されています(5)。

線形成長のバイオマーカー:NT-proCNP

小児での研究で、NT-proCNPの血中濃度は、成長中の線形成長速度と密接に関係していることが示されました。
乳児期は両性でCNPおよびNT-proCNP濃度が高くなっていますが、幼児初期には減少します。NT-proCNP濃度は思春期に再度上昇し、成人期に再度減少します。NT-proCNP濃度のピークは、ピーク高さ速度の年齢と一致します。そのため、血中NT-proCNPで測定したCNP合成量は、健康な全年齢の小児の線形成長と高く関連しており、線形成長の優れたバイオマーカーとされています(3, 6)。

骨疾患と遺伝性疾患におけるNT-proCNP

発達中の骨の成長におけるCNPの役割はよく明らかにされていますが、成人の骨格における役割は不明のままです。CNPは、骨形成と骨分解に関与する細胞の骨芽細胞と破骨細胞で発現しているため、骨リモデリングが小児での血漿中濃度上昇に寄与している可能性があります(3)。成人での骨代謝回転マーカーの変化は、血漿中CNP産物の変化と関連しています(7)。

CNPはまた、骨、関節、および軟骨の異常発達を引き起こす、400以上の遺伝的状態のカテゴリーである骨格形成異常の、いくつかの種類に関わっていることがわかっています。CNPシグナル伝達に関わる遺伝子の変異は、小人症(dwarfism)のもっとも一般的な形態である、軟骨無形成症(achondroplasia)や軟骨低形成症(hypochondroplasia)のような疾患で見られます(8)。
これらの状態におけるCNPの役割の完全な理解、および潜在的な治療ターゲットの特定には、さらなる研究が必要です。

Biomedica社 NT-proCNP ELISAキット

Biomedica社は、血清・血漿中の心血管バイオマーカーを測定する、高品質なELISAキットを幅広く提供しています。

日本ではBiomedica社のELISAキットを代理店のフナコシ株式会社よりご購入頂けます。(メーカー略称:BMC)

キットの特長

  • オーストリア・Biomedica社で製造開発されています。
  • 400報以上の文献で広く使用されています。
  • FDA/ICH/EMEAの国際的な品質ガイドラインに沿って、キットのバリデーションを行っています。

※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

  • 商品コード:BI-20812
  • サンプル種:血清、血漿(EDTA、クエン酸、ヘパリン)、尿、細胞培養上清(ヒトおよび非ヒトサンプル)
  • サンプル量:20 µL / well
  • 感度:0.7 pmol/l (= 3.49 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 128 pmol/l (= 0 – 638 pg/ml)
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

Biomedica社 その他のELISAキット

NT-proANP

  • 商品コード:BI-20892
  • サンプル種:血清、血漿(EDTA、クエン酸、ヘパリン)、尿、細胞培養上清(ヒト・ラット・マウスサンプル)
  • サンプル量:10 µL / well
  • 感度:0.05 nmol/l (= 0.64 ng/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 10 nmol/l (= 0 – 127 ng/ml)
  • 交差性:他の長さのproANP、およびproBNPやproCNPとの交差性は、以下の通りです。
    proANP (1-30) <1%、proANP (31-67) <1%、proANP (79-98) <1%、alpha ANP (99-126) <1%
    proBNP (8-29) <1%、proBNP (32-57) <1%
    proCNP (1-19) <1%、proCNP (30-50) <1%、proCNP (51-97) <1%
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

NT-proBNP (ヒト)

  • 商品コード:SK-1204
  • サンプル種:血清、血漿(EDTA)
  • サンプル量:50 µL / well
  • 感度:3.0 pmol/l (= 25.4 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 640 pmol/l (= 0 – 5,424 pg/ml)
  • 交差性:ヒトのみに交差
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

NT-proBNP(ラット)

  • 商品コード:BI-1204R
  • サンプル種:血清、血漿
  • サンプル量:10 µL / well
  • 感度:検出限界: 21 pg/ml;定量下限: 50 pg/ml
  • 標準曲線範囲:0 – 3,200 pg/ml
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社

製品に関する日本でのお問い合わせ先

Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。

製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp

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参考文献

  1. Circulating products of C-type natriuretic peptide and links with organ function in health and disease.
    Prickett TC, A Espiner E. Peptides. 2020 Oct;132:170363. doi: 10.1016/j.peptides.2020.170363. Epub 2020 Jul 4. PMID: 32634451.
  2. C-type natriuretic peptide increases bone resorption in 1,25-dihydroxyvitamin D3-stimulated mouse bone marrow cultures.
    Holliday LS, Dean AD, Greenwald JE, Glucks SL. J Biol Chem. 1995 Aug 11;270(32):18983-9. doi: 10.1074/jbc.270.32.18983. PMID: 7642558.
  3. Plasma C-Type Natriuretic Peptide: Emerging Applications in Disorders of Skeletal Growth.
    Espiner E, Prickett T, Olney R. Horm Res Paediatr. 2018;90(6):345-357. doi: 10.1159/000496544. Epub 2019 Mar 7. PMID: 30844819.
  4. Hormones and osteoporosis update. Effects of natriuretic peptides on endochondral bone growth.
    Clin Calcium. 2009 Jul;19(7):1003-8. Yasoda A, Nakao K. Japanese. PMID: 19567998.
  5. Comparative measurement of CNP and NT-proCNP in human blood samples: a methodological evaluation.
    Kuehnl A, Pelisek J, Bruckmeier M, Safi W, Eckstein HH. J Negat Results Biomed. 2013 Apr 1;12:7. doi: 10.1186/1477-5751-12-7. PMID: 23547980; PMCID: PMC3621618
  6. Amino-terminal propeptide of C-type natriuretic peptide (NTproCNP) predicts height velocity in healthy children.
    Olney RC, Permuy JW, Prickett TC, Han JC, Espiner EA. Clin Endocrinol (Oxf). 2012 Sep;77(3):416-22. doi: 10.1111/j.1365-2265.2012.04392.x. PMID: 22435455; PMCID: PMC3466812.
  7. C-type natriuretic peptide forms in adult hyperthyroidism: correlation with thyroid hormones and markers of bone turnover.
    Schouten BJ, Prickett TC, Hunt PJ, Richards AM, Geffner ME, Olney RC, Espiner EA. Clin Endocrinol (Oxf). 2012 Jun;76(6):790-6. doi: 10.1111/j.1365-2265.2011.04295.x. PMID: 22103885.
  8. New developments in the management of achondroplasia.
    Högler W, Ward LM. Wien Med Wochenschr. 2020 Apr;170(5-6):104-111. doi: 10.1007/s10354-020-00741-6. Epub 2020 Mar 6. PMID: 32144686; PMCID: PMC7098936.

会社情報

会社名Biomedica Medizinprodukte GmbH
部署名
住所Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria
TEL+43 12910745
FAX
Websitehttps://www.bmgrp.com/
E-mailinfo@bmgrp.com