2019年末に発生、全世界にパンデミックをもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。
世界6億人以上の感染者・600万人以上の死者を出し(*)、幾度もの感染ピークと減衰を繰り返しながら、2022年時点「現在(12月)」でもいまだに猛威を振るっています。
mRNAワクチンの臨床試験が完全に終了していない中で、初めて大々的にヒトへのmRNAワクチン投与が進むなど、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はこれまでの人類の研究成果を試すかのような存在です。そして新型コロナウイルスの感染制御、治療に向けての研究成果も日々発表されています。
(*) Johns Hopkins University & Medicine Coronavirus resource center(https://coronavirus.jhu.edu/map.html)からのデータによる。
その中でも最近、Wntシグナル伝達阻害機能を持つ因子であるDKK-1(Dickkopf-1、SK)が、COVID-19の予後予測に使用できる可能性を示唆する論文が発表されました[1]。
この論文中では、オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)で製造されたキットが使用されています。
Biomedica社は、各種疾患のバイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
Biomedica社のELISAキットは、すぐに使用できるキャリブレーターとコントロールが含まれており、国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。世界中でご利用頂いており、1,500本以上の文献で使用されています。
今回は[1]の文献で使用されている、Biomedica社の、Human DKK-1 ELISAキットについてご紹介致します。
1. Circulating Dickkopf1 parallels metabolic adaptations and predicts disease trajectories in patients with Covid-19.
Jaschke NP, Funk AM, Jonas S, et al.
J Clin Endocrinol Metab. 2022;dgac514. doi:10.1210/clinem/dgac514
DKK-1とは?
DKK-1はWntシグナル伝達経路の制御因子として機能する分泌型タンパク質です。Dickkopf関連タンパク質ファミリーの一種で、リンカー領域で2つのシステインリッチドメインに分かれている特徴があります。DKK-1のLRP5/6共受容体への結合は、Wntとの相互作用の阻害、および膜貫通Kremen-1またはKremen-2との三重複合体を形成することにより、LRP5/6の内在化を促進します。
Wntシグナル伝達経路は、胚発生、組織分化やホメオスタシスの他、腫瘍形成にも関わっています。DKK-1のWntシグナル伝達可溶性阻害剤であるDKK-1は、細胞運命、増殖、遊走、極性や遺伝子発現に影響を与えています。Wntシグナル伝達は特に、破骨細胞の形成を阻害して骨芽細胞の分化を誘導するため、骨のホメオスタシスに重要な役割を果たしています。
DKK-1は成熟骨芽細胞と骨細胞で発現しており、骨芽細胞の分化を制御しています。このように、DKK-1は骨リモデリングの制御に大きく関与しており、その機能不全は骨病変と関係しています。さらにDKK-1は、がんの進行・予後のバイオマーカーとして考えられており、様々な種類の悪性腫瘍における潜在的な治療ターゲットとなっています。様々な種類のがんの中でも、DKK-1は骨転移および溶骨性骨病変の形成に関連しています。
DKK-1によるCOVID-19感染の予後予測
Journal of Clinical Endocrinology & Metabolismで報告されたNikolai Jaschkeらの新しい研究結果[1]によると、
・循環DKK-1レベルには個人差があり、新型コロナウイルス感染時間に応じて変化すること
・新型コロナウイルス感染が、空腹時に類似した代謝的対応を促進し、循環DKK-1レベルに反映されること
・血清中のDKK-1レベルが低い患者は、レベルが高い患者よりも、新型コロナウイルス感染症での死亡率が2倍高くなりうること
が示されました。そのため、循環DKK-1量は新型コロナウイルス感染患者における、臨床での重症度指標となる可能性が示唆されました。
この論文では、Biomedica社のDKK-1 ELISAキット、カタログ番号#BI-20413、RRID: AB_2922680を使用してDKK-1量が測定されています。
Biomedica社のDKK-1 ELISAキットは、フナコシ株式会社よりご購入頂けます。
Biomedica 社 Human DKK-1 ELISA kit
商品コード:BI-20413
メーカー略称:BMC
Biomedica社 DKK-1 ELISAキット
キットの特長
- FDA/ICH/EMEAの国際的な品質ガイドラインに沿って、厳密なバリデーションを実施したキットです。
- わずか20 µL/wellの少ないサンプル量で測定可能です。
- 170報以上の文献での使用報告があります。
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
DKK-1 ELISAキット
- 商品コード:BI-20413
- サンプル種:血清
- サンプル量:20 µl / well
- 感度:1.7 pmol/l (= 43.0 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 160 pmol/l (= 0 – 4,103 pg/ml)
- 交差性:ヒトDKK-1のみ。ヒトDKK-2、DKK-4、Kremen-1、Kremen-2やLRP-6への阻害は見られません。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
使用文献例
- Factors associated with serum soluble inhibitors of Wnt-β-catenin signaling (sclerostin and dickkopf-1) in patients undergoing peritoneal dialysis.
Yamada S, Tsuruya K, Tokumoto M, Yoshida H, Ooboshi H, Kitazono T. Nephrology (Carlton). 2015 Sep;20(9):639-45. doi: 10.1111/nep.12509. PMID: 25974190. - Daratumumab Improves Bone Turnover in Relapsed/Refractory Multiple Myeloma; Phase 2 Study “REBUILD” .
Terpos, Ntanasis-Stathopoulos, Kastritis, Hatjiharissi, Katodritou, Eleutherakis-Papaiakovou, Verrou, Gavriatopoulou, Leonidakis, Manousou, Delimpasi, Malandrakis, Kyrtsonis, Papaioannou, Symeonidis, Dimopoulos.Cancers (Basel) (2022) 14 (11), DOI: 10.3390/cancers14112768,PMID: 35681747. - Evaluation of circulating Dickkopf-1 as a prognostic biomarker in ovarian cancer patients.
Klotz, Link, Goeckenjan, Wimberger, Poetsch, Jaschke, Hofbauer, Göbel, Rachner, Kuhlmann.Clin Chem Lab Med (2022) 60 (1), 109-117 DOI: 10.1515/cclm-2021-0504.PMID: 34687595.
その他の使用文献はこちらからご覧頂けます。
関連文献
- Dickkopf-1 Promotes Angiogenesis and is a Biomarker for Hepatic Stem Cell-like Hepatocellular Carcinoma.
Suda T, Yamashita T, Sunagozaka H, Okada H, Nio K, Sakai Y, Yamashita T, Mizukoshi E, Honda M, Kaneko S.
Int J Mol Sci. 2022 Mar 3;23(5):2801. doi: 10.3390/ijms23052801. PMID: 35269944; PMCID: PMC8911428. - Elevated Expression of Dkk-1 by Glucocorticoid Treatment Impairs Bone Regenerative Capacity of Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells.
Kato T, Khanh VC, Sato K, Kimura K, Yamashita T, Sugaya H, Yoshioka T, Mishima H, Ohneda O.
Stem Cells Dev. 2018 Jan 15;27(2):85-99. doi: 10.1089/scd.2017.0199. PMID: 29084466.
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