厚生労働省発表のデータによると,日本人女性の「がん」による死因のうち,乳がんは5位であることが報告されています。
女性と比較して低い割合ではありますが,男性でも乳がんで命を落としています(がんが死因のケースで0.04%程の割合)。(※)
そしてもちろん,乳がんは日本だけでなく世界中の女性で最もよく見られるがんです。
どのように乳がんが生じ,大きくなり,骨などに転移していくのか・・・その理解を進めることは,リスクや負担の低減,病状把握、治療効果の確認や将来的な新しい治療法の研究に役立ちます。
これまでの研究により,乳がん特有の有望な予後マーカーとなりうるタンパク質として,Periostin とNeuropilin-1 が同定されました。
オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下,Biomedica社)では,これら乳がんバイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
※2019年のデータ。出典:厚生労働省ウェブサイト「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
Periostin(OSF-2)の役割
Periostin(osteoblast-specific factor,OSF-2) は,コラーゲンが豊富な繊維性結合組織で発現し,91 kDaのホモ二量体からなる可溶性の分泌型細胞外マトリックスタンパク質です。選択的スプライシングによる,少なくとも7つのアイソフォームが知られています。
Periostinは破骨細胞の動員・接着・スプレディングや,心臓形成における間葉分化に関連している他,がんにおいては上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition)に関連していると考えられ,最新の治療ターゲットとして注目されています。
乳がん患者においては,血清中の高レベルなPeriostinと低い生存率の関連性から,乳がんの病因であることが示唆されています(Rachner TD et al., 2020)。
その他,Periostinが関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
Biomedica社のPeriostin ELISAキットのご紹介
ヒトPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:20 pmol/l (= 1,800 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 4,000 pmol/l (= 0 – 360,000 pg/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
マウスPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433MS
- サンプル種:血清、血漿
- サンプル量:≤ 5 µl / well
- 感度:0.003 nmol/l (= 0.27 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 16 nmol/l (= 0 – 1,400 ng/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
Neuropilin-1 (NRP1)の役割
Neuropilin-1 (Neuropilin-1,CD304 あるいはBDCA-4)は,923アミノ酸からなる1回膜貫通型の糖タンパク質です。心血管,神経,免疫系を含む主要な生物学的プロセスにおける細胞表面受容体として必要不可欠で(Guo and Vander Kooi, 2015; Koch, 2012),多くの細胞や組織で発現しています。
例えば,膜貫通型のNeuropilin-1は神経細胞,内皮細胞,血管平滑筋細胞,心筋細胞,多くの腫瘍細胞株や新生物,破骨細胞,ナイーブT細胞や血小板で発現しています。可溶性のNeuropilin-1は様々な非内皮細胞,例えば肝細胞や腎臓の遠位尿細管,近位尿細管に発現しています。
Neuropilin-1の細胞外領域は多くのリガンド,例えば軸索誘導に決定的な役割を持つクラスIIIセマフォリン(Semaphorin)や,血管新生サイトカインファミリーのVEGFのメンバーと結合します。膜通過型Neuropilin-1は共受容体機能を持っており,リガンドと結合すると,PDZドメインを含む受容体タンパク質経由のシグナル伝達を引き起こします。一方,リガンドと結合した可溶性Neuropilin-1 (sNRP1)はデコイとして作用することで,アンタゴニスト作用(拮抗作用)を示します。(Gu et al., 2002; Guo and Vander Kooi, 2015)
Neuropilin-1は,軸索誘導,血管新生や腫瘍の成長,再生と修復などの数多くの生理的・病理的状態への関与が示唆されています。(Alattar et al., 2014; Bondeva and Wolf, 2015; Roy et al., 2017; Telley et al., 2016; Tse et al., 2017; Zachary, 2014)
その他,破骨細胞分化の刺激や,心不全の転帰予測バイオマーカー候補となる可能性,腎線維化への関与についての研究報告もあります。(Bondeva and Wolf, 2015; Chen et al., 2013, p. 1; Pellet-Many et al., 2008. )
またVEGFに対する共受容体として,がん治療のターゲットとしても期待されています。(Graziani and Lacal, 2015)
乳がんの他,Neuropilin-1が関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
Biomedica社のNeuropilin-1 ELISAキットのご紹介
ヒトNeuropilin-1 ELISAキット
- 商品コード:BI-20409
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:0.09 nmol/l (= 6.3 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 12 nmol/l (= 0 – 836 ng/ml)
- 交差性:ヒトNeuropilin-1と他動物種Neuropilin-1の高い配列相同性により、ブタやアカゲザル、および他動物種のNeuropilin-1に交差する可能性があります。抗体の結合部位のアミノ酸配列からNeuropilin-2との相同性は見られないため、Neuropilin-2との交差は期待されません。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
Biomedica社 ELISAキットの特長
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
- 簡単―希釈不要のキャリブレーター(スタンダード)とコントロールが含まれています。
- 信頼性―国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。
- 少ないサンプル量―1サンプルあたり10 µL から測定できます。
Biomedica社の製品案内:Biomarkers in Oncologyも合わせてご覧ください。
乳がん研究における,Periostin およびNeuropilin-1に関する文献
High serum levels of periostin are associated with a poor survival in breast cancer.
Rachner TD, Göbel A, Hoffmann O, Erdmann K, Kasimir-Bauer S, Breining D, Kimmig R, Hofbauer LC, Bittner AK. Breast Cancer Res Treatment. 2020.
Periostin Short Fragment with Exon 17 via Aberrant Alternative Splicing Is Required for Breast Cancer Growth and Metastasis.
Ikeda-Iwabu Y, Taniyama Y, Katsuragi N, Sanada F, Koibuchi N, Shibata K, Shimazu K, Rakugi H, Morishita R. Cells. 2021.
Role of periostin in cancer progression and metastasis: inhibition of breast cancer progression and metastasis by anti-periostin antibody in a murine model.
Kyutoku M, Taniyama Y, Katsuragi N, Shimizu H, Kunugiza Y, Iekushi K, Koibuchi N, Sanada F, Oshita Y, Morishita R. Int J Mol Med. 2011.
乳がん研究における,Neuropilin-1に関する文献
Soluble Neuropilin-1 is an independent marker of poor prognosis in early breast cancer.
Rachner TD, Kasimir-Bauer S, Goebel A, Erdmann K, Hoffmann O, Rauner M, Hofbauer LC, Kimmig R, Bittner AK. J Cancer Res Clin Oncol. 2021.
Downregulation of neuropilin-1 on macrophages modulates antibody-mediated tumoricidal activity.
Cancer Immunol Immunother. Kawaguchi K, Suzuki E, Nishie M, Kii I, Kataoka TR, Hirata M, Inoue M, Pu F, Iwaisako K, Tsuda M, Yamaguchi A, Haga H, Hagiwara M, Toi M. 2017 Cancer Immunol Immunother.
関連製品情報
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
■ 高品質で,少ないサンプル量(5 µL / well)で測定できるマウスのPeriostinのELISAキット:
#BI-20433MS Biomedica Mouse Periostin ELISA kit
■ FDA/ICH/EMEAのガイドラインに沿って厳密に検証された,わずか10 μL/ wellの血清・血漿サンプルから高感度に測定できるヒトVEGF ELISAキット(研究用):
#BI-VEGF Biomedica Human VEGF ELISA kit
製品に関する日本でのお問い合わせ先
Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。
製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp
までお問い合わせください。
会社情報
会社名 | Biomedica Medizinprodukte GmbH |
部署名 | |
住所 | Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria |
TEL | +43 12910745 |
FAX | |
Website | https://www.bmgrp.com/ |
info@bmgrp.com |