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臓器の一つである腎臓は、血液中から老廃物をろ過し、尿として体外に排泄するための機能を持つ重要な器官です。
腎臓には多くの疾患に関連して生じる障害以外に、薬剤によって引き起こされる障害(腎障害)もあります。
そのような腎障害を早期に発見することは、治療および治療方法の再検討に大変重要です。
特に血液や尿中から検出できるバイオマーカーは、疾患の検出、創薬や患者のモニタリングに有用なツールです。

これまでのバイオマーカー研究で、薬剤性の急性腎障害における微小血管組織損傷や腎尿細管障害を検出するための有望な新しいバイオマーカーとして、EndostatinとVanin-1が見つかりました。
EndostatinとVanin-1やその他関連のタンパク質、例えばFGF23やPeriostinは、ELISAで簡単に検出できます。

オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)では、各種疾患のバイオマーカーの測定に有用な研究用のELISAキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
Biomedica社のELISAキットは、すぐに使用できるキャリブレーターとコントロールが含まれており、国際的な品質ガイドラインに沿ってバリデーションされています。世界中でご利用頂いており、1,500本以上の文献で使用されています。

今回はBiomedica社の、腎臓学の研究に関わる新しいバイオマーカーを測定するアッセイキットの内、Endostatin、Vanin-1、Fibroblast Growth Factor (FGF)23とPeriostinのキットについてご紹介致します。

Endostatinとは?

Endostatinは分子量20kDaの18型コラーゲンのC末端タンパク質分解断片で、様々な器官の血管基底膜に局在する内因性の血管新生阻害因子です。Endostatinネットワークの生物学的な機能には、SPARC、トロンボスポンジン1、グリコサミノグリカン、コラーゲンおよびインテグリンが含まれています。

Endostatinは、損傷組織の尿細管細胞で、腎線維症の進行中に発現します。慢性腎臓病の患者の後期ステージで観察される腎臓微小血管疾患において、上昇したEndostatinレベルは細胞外基質の分解が増強した結果生じていると考えられています。そのためEndostatinは、慢性腎臓病患者において進行性微小血管腎疾患の重要なマーカーとなる可能性があります(1、2、3)。

Biomedica社 Endostatin ELISAキット

※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

ヒトEndostatin ELISAキット

  • 商品コード:BI-20742
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:20 µl / well
  • 感度:4 pmol/l (= 80 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 800 pmol/l (= 0 – 16,000 pg/ml)
  • 交差性:ヒトEndostatinのみ。 COL15A1には交差しない。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

マウス・ラットEndostatin ELISAキット

  • 商品コード:BI-20742MR
  • サンプル種:血清、血漿
  • サンプル量:5 µl / well
  • 感度:0.24 nmol/l (= 4.9 ng/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 32 nmol/l (= 0 – 653 ng/ml)
  • 交差性:マウス、ラットEndostatinのみ。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

Vanin-1とは?

Vanin-1は513アミノ酸のGPIアンカー型糖タンパク質で、塩基ドメインとニトリラーゼ酵素ドメインから構成されています(4)。Vanin-1の機能の一つとして、パンテインからパントテン酸(ビタミンB5)とシステアミンへの加水分解の触媒機能があり、酸化ストレスと炎症の調節に関与します(5)。
Vanin-1は、幅広い種類の組織で発現しており,特に腎臓尿細管上皮細胞でもっとも高発現しています。(6)。

腎尿細管損傷のバイオマーカー同定を目的とした研究で、Hosohataらは、腎毒性物質誘導傷害のラットモデルにおいて、Vanin-1が尿細管内で他のマーカーよりも早く発現が上昇し、尿中に流れこむことを示しました(7)。その後の研究で、薬剤性急性腎障害(8、9)、閉塞性腎障害(10)、水腎症(11)、糖尿病性腎症(12)、大腸炎モデルラットでの腎障害(13)および高塩分摂取下自発的高血圧ラットにおける腎障害(14、15 )で、腎尿細管損傷の早期バイオマーカーとしての有効性が更に検証されました。
特にVanin-1は、既に確立された急性腎障害バイオマーカーであるKIM-1、NGAL、またはNAGよりも優れたマーカーであるという報告もあります(7、12、13)。

Biomedica社 Vanin-1 (Urine) ELISAキット

※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

ヒトVanin-1 (Urine)

  • 商品コード:BI-VAN1U
  • サンプル種:尿
  • サンプル量:10 µl / well
  • 感度:9.6 pmol/l (= 500 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 1200 pmol/l (= 0 – 62500 pg/ml)
  • 交差性:マウスVanin-1には交差しない。様々なサルのVanin-1には交差する可能性があります。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

マウス・ラットVanin-1 (Urine)

  • 商品コード:BI-VAN1MR
  • サンプル種:血清、血漿、尿
  • サンプル量:5 µl / well
  • 感度:2.31 pmol/l
  • 標準曲線範囲:0 – 200 pmol/l (= 0 – 10.6 ng/ml)
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」

FGF23とは?

FGF23は、線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバーで、リン酸とビタミンD恒常性の調節機能があります。全長251アミノ酸からなるタンパク質で、24アミノ酸のシグナルペプチドを含みます。
FGF23の一部はアルギニン179とセリン180の間でタンパク質分解的に切断され、N末端断片とC末端断片を生成します。したがってヒトの循環系では、ホルモン的にインタクトなFGF23と、不活性なN末端およびC末端断片が存在しています。この循環するFGFのレベルは、遺伝性または後天性疾患の両方で変わり得ます。慢性腎臓病(CKD)の患者においては、リン酸塩の腎排泄の減少に応答して、循環しているFGF23のレベルが上昇します。

Biomedica社 FGF23 ELISAキット

※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

FGF23 (C-terminal)

  • 商品コード:BI-20702
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿
  • サンプル量:50 µl / well
  • 感度:0.08 pmol/l (= 0.6 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 20 pmol/l (= 150.4 pg/ml)
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

Intact FGF23

  • 商品コード:BI-20700
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:50 µl / well
  • 感度:0.21 pmol/l (=5.4 pg/ml )
  • 標準曲線範囲:0 – 1,600 pg/ml (= 0 – 60.8 pmol/l)
  • 交差性:FGF3、FGF19、FGF21には交差しない。
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

Periostin(OSF-2)とは?

Periostin(osteoblast-specific factor,OSF-2) は、コラーゲン豊富な繊維性結合組織で発現し、91 kDaのホモ二量体からなる可溶性の分泌型細胞外マトリックスタンパク質です。選択的スプライシングによって生成される、少なくとも7つのアイソフォームが知られています。

Biomedica社 Periostin ELISAキット

※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。

ヒトPeriostin ELISAキット

  • 商品コード:BI-20433
  • サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
  • サンプル量:10 µl / well
  • 感度:20 pmol/l (= 1,800 pg/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 4,000 pmol/l (= 0 – 360,000 pg/ml)
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

マウスPeriostin ELISAキット

  • 商品コード:BI-20433MS
  • サンプル種:血清、血漿
  • サンプル量:≤ 5 µl / well
  • 感度:0.003 nmol/l (= 0.27 ng/ml)
  • 標準曲線範囲:0 – 16 nmol/l (= 0 – 1,400 ng/ml)
  • 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
  • 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト

腎臓学研究用バイオマーカーのカタログ

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電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
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文献情報

1. Elevated plasma levels of endostatin are associated with chronic kidney disease.
Chen, J., Hamm, L.L., Kleinpeter, M.A., Husserl, F., Khan, I.E., Chen, C.-S., Liu, Y., Mills, K.T., He, C., Rifai, N., Simon, E.E., He, J., 2012. Am. J. Nephrol. 35, 335–340.
PMID: 22456114; PMCID: PMC3362190

2. A defective angiogenesis in chronic kidney disease.
Futrakul, N., Butthep, P., Laohareungpanya, N., Chaisuriya, P., Ratanabanangkoon, K., 2008. Ren. Fail. 30, 215–217. PMID: 18300124

3. Excretion of anti-angiogenic proteins in patients with chronic allograft dysfunction.
Moskowitz-Kassai, E., Mackelaite, L., Chen, J., Patel, K., Dadhania, D.M., Gross, S.S., Chander, P., Delaney, V., Deng, L., Chen, L., Cui, X., Suthanthiran, M., Goligorsky, M.S., 2012. Nephrol. Dial. Transplant. 27, 494–497.
PMID: 22253069; PMCID: PMC3275786

4. The structure of vanin 1: a key enzyme linking metabolic disease and inflammation.
Boersma, Y.L., Newman, J., Adams, T.E., Cowieson, N., Krippner, G., Bozaoglu, K., Peat, T.S., 2014. Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 70, 3320–3329.
PMID:25478849

5. Is pantetheinase the actual identity of mouse and human vanin-1 proteins?
Maras, B., Barra, D., Duprè, S., Pitari, G., 1999. FEBS Letters 461, 149–152.

6. Pantetheinase activity of membrane-bound Vanin-1: lack of free cysteamine in tissues of Vanin-1 deficient mice.Pitari, G., Malergue, F., Martin, F., Philippe, J.M., Massucci, M.T., Chabret, C., Maras, B., Duprè, S., Naquet, P., Galland, F., 2000. FEBS Letters 483, 149–154.

7. Vanin-1: a potential biomarker for nephrotoxicant-induced renal injury.
Hosohata, K., Ando, H., Fujiwara, Y., Fujimura, A., 2011. Toxicology 290, 82–88.
PMID:21907259

8. Urinary Vanin-1 As a Novel Biomarker for Early Detection of Drug-Induced Acute Kidney Injury.
Hosohata, K., Ando, H., Fujimura, A., 2012. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 341, 656–662.

9. Early prediction of cisplatin-induced nephrotoxicity by urinary vanin-1 in patients with urothelial carcinoma.
Hosohata, K., Washino, S., Kubo, T., Natsui, S., Fujisaki, A., Kurokawa, S., Ando, H., Fujimura, A., Morita, T., 2016a. Toxicology 359–360, 71–75.
PMID:27317936

10. A Novel Biomarker for Acute Kidney Injury, Vanin-1, for Obstructive Nephropathy: A Prospective Cohort Pilot Study.
Washino, S., Hosohata, K., Oshima, M., Okochi, T., Konishi, T., Nakamura, Y., Saito, K., Miyagawa, T., 2019. Int J Mol Sci 20.
PMID:30791405; PMCID: PMC6412925

11. Vanin-1 in Renal Pelvic Urine Reflects Kidney Injury in a Rat Model of Hydronephrosis.Hosohata, K., Jin, D., Takai, S., Iwanaga, K., 2018. Int J Mol Sci 19.
PMID:30332759; PMCID: PMC6214032

12. Proteomic identification of vanin-1 as a marker of kidney damage in a rat model of type 1 diabetic nephropathy.
Fugmann, T., Borgia, B., Révész, C., Godó, M., Forsblom, C., Hamar, P., Holthöfer, H., Neri, D., Roesli, C., 2011. Kidney Int. 80, 272–281.
PMID:21544065

13. Early detection of renal injury using urinary vanin-1 in rats with experimental colitis.
Hosohata, K., Ando, H., Fujimura, A., 2014. J Appl Toxicol 34, 184–190.
PMID:23307618

14. Early urinary biomarkers for renal tubular damage in spontaneously hypertensive rats on a high salt intake.
Hosohata, K., Yoshioka, D., Tanaka, A., Ando, H., Fujimura, A., 2016b. 
Hypertens. Res. 39, 19–26.
PMID:26376947

15. Early urinary biomarkers of renal tubular damage by a high-salt intake independent of blood pressure in normotensive rats.
Washino, S., Hosohata, K., Jin, D., Takai, S., Miyagawa, T., 2018. Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 45, 261–268.
PMID:29027259

会社情報

会社名Biomedica Medizinprodukte GmbH
部署名
住所Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria
TEL+43 12910745
FAX
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E-mailinfo@bmgrp.com