細胞増殖アッセイは、成長因子、サイトカイン、栄養、および細胞毒性あるいは化学療法薬剤のスクリーニングに広く使用されています。
オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下、Biomedica社)は、各種バイオマーカーや細胞増殖の測定に有用な研究用のキットを販売しており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
優れた品質を誇る、Biomedica社の測定キットをぜひご利用ください。
これまでの細胞増殖のアッセイ方法
細胞増殖アッセイは、成長因子、サイトカイン、栄養、および細胞毒性あるいは化学療法薬剤のスクリーニングに広く使用されています。
細胞数の決定には様々な方法があります。例えば、顕微鏡による確認、電子パーティクルカウンターによる方法、放射性前駆体の取り込みによる間接的な測定、発色色素による総タンパク質の定量、あるいは細胞内酵素の代謝活性測定などがあります。
近年で細胞増殖の最も一般的なアッセイは、3H(トリチウム)-チミジンの細胞内DNAへの取り込みでした。しかし3H-チミジンアッセイでは、測定前に取り込みされなかった標識を、何らかの細胞採取法を使用して除去する必要があり、労力を要します。
3H(トリチウム)-チミジンに代わるアッセイ方法
1956年に、細胞生存率の指標として「テトラゾリウム塩」を使用する最初の論文が発表されました。
この方法は、生細胞が、若干着色している、あるいは無色のテトラゾリウム塩を、強く発色するホルマザン誘導体に還元するという発見に基づいています。この還元プロセスには、機能的なミトコンドリアが必要です。ミトコンドリアは細胞死の数分以内に不活性化されるため、本方法は、生細胞と死細胞を区別するための優れたツールとなりました。
ただし初期のテトラゾリウム塩は、アッセイで生じるホルマザン産物が不溶性であるなど、いくつかの問題点がありました。複数回のピペッティングや混和、または危険な可溶化剤の使用を含め、時間と労力のかかる可溶化手順が必要でした。
そしてこのアッセイ後に必要な処理は、感度を上昇させるためのインキュベーション時間延長ができない上、細胞増殖を不可逆的に止めてしまうことから、アッセイ後の培養継続ができませんでした。使用に不便となるこれらの問題を改良するため、可溶性還元産物の非毒性テトラゾリウム塩が開発されました。この可溶性色素によって、アッセイ手順が簡単にはなりましたが、実際はホルマザン色素の不安定性、古典的なMTTアッセイと比べて最終産物の吸光度が比較的低いことから、使用は限られたものとなっていました。
Biomedica社が、細胞増殖アッセイを進化させる
Biomedicaの研究部門は、これらの問題を解決し、簡単・迅速で、信頼性のある非同位体細胞増殖アッセイを開発しました。これまでのデータとの整合性のため、標準的なチミジン取り込みアッセイとの互換性を高めています。そのため、Biomedica社のアッセイを使用する場合でも、これまでのサンプル準備法や「標識」手順からの変更は不要です。
さらに、発色基質の添加前後で培地除去が不要のため、可溶化あるいは回収作業が必要ありません。
Biomedicaの方法は、チミジンとMTT法の利点である「正確性、スピード、信頼性、使いやすさ」が全て兼ね備えたアッセイです。
さらに、これまでに得られたデータによれば、発色団は非毒性であることがわかりました。Biomedica社のアッセイと放射性ヌクレオチド二重標識で、細胞の生存率とDNA量についてさらに多くの情報を得ることができるようにもなりました。
EZ4U – 細胞増殖アッセイの原理
アッセイの準備は、標準的な3H-チミジン取り込み法と同様に行います。トリチウム化ヌクレオチドでパルスする代わりに、200 µLのサンプルへ、20 µLの色素溶液を加えます。
インキュベーション時間は細胞の代謝能力によりますが、通常は37°Cで2~5時間のインキュベーションで十分です。黄色のテトラゾリウム化合物を赤色のホルマザン誘導体に変換する能力は細胞によって異なるため、図で示されるように、細胞株ごとに代謝能力を試験することをお勧めします。
Biomedica社 EZ4U Cell Proliferation and Cytotoxicity Assay キット
Biomedica社のEZ4U Cell Proliferation and Cytotoxicity Assay キットは、以下の特徴を持つ、細胞増殖・細胞毒性のアッセイを簡単に行えるキットです。
日本では、代理店のフナコシ株式会社よりご購入頂けます。(メーカー略称:BMC)
キットの特長
- オーストリア・Biomedica社で製造開発されています。
- 多くの研究と、240以上もの論文で使用されています。
- 生細胞での使用に簡単で便利な、シングルステップのインキュベーションで測定できます。
- 3H(トリチウム)のような放射性物質を使うことなく、非放射性でのアッセイが可能で、簡便です。
- 細胞増殖の確認後も、培養の継続が可能です。
※日本では全て「研究用」試薬として販売されています。
EZ4U Cell Proliferation and Cytotoxicity Assay キット
- 商品コード:BI-5000
- サンプル種:培養細胞
- サンプル量:200 µl / well
- インキュベーション時間:2~5時間(細胞種によって異なります。)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
Biomedica社 EZ4U Cell Proliferation and Cytotoxicity Assay プロトコル概要
- アッセイでの使用前に、全ての試薬とサンプルを室温に戻す。
- それぞれのウェルに、200 µLの培養細胞を加える。
- 20 µLのSUB(基質)を各ウェルに添加し、穏やかに回す。
- 37°Cで2~5時間インキュベートする。(時間は細胞の代謝能力によります。)
- マイクロプレートリーダーでプレートのシェイク機能が無い場合、振動器で混ぜるか、手で軽く叩く。
- 620 nmを参照波長とし、450 nmまたは492 nmの吸光度を読む。
- 結果の正確性向上のため、細胞を含まないアッセイ培地の基質ブランクの吸光度を、全ての値から差し引く。
Biomedica社 EZ4U Cell Proliferation and Cytotoxicity Assay 使用のポイント
- 基質は無菌ではありません。無菌条件が必要な場合は、可溶化されたready-to-useの染色基質をフィルター滅菌してください。(フィルター前のわずかな濁りは、フィルトレーションやアッセイの性能に影響しません。)
- 高感度のため、可能な限り使用する細胞数を少なくすることをお勧めします。
- 再現性ある発色のため、細胞培養を37°Cで平衡化します。
- 事前に確認せず、インキュベーション時間を延長しないでください。感度上昇よりも、バックグラウンドの上昇が生じる可能性があります。
- 参照波長620 nm(450 nmまたは492 nmで得られた値から差し引く)の使用は必須ではありませんが、試験の性能が向上します。
- 発色団は非毒性のため、ホルマザン誘導体除去後の細胞培養継続が可能です。
製品に関する日本でのお問い合わせ先
Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。
製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp
までお問い合わせください。
使用文献例
- A soluble 17 kDa tumour necrosis factor (TNF) mutein, TNF-SAM2, with membrane-bound TNF-like biological characteristics. Yoshida A, Kohchi C, Inagawa H, Nishizawa T, Hori H, Soma G. Anticancer Res. 2006 Nov-Dec;26(6A):4003-7. PMID: 17195449
- Cytotoxicity of combinations of the pan-KRAS SOS1 inhibitor BAY-293 against pancreatic cancer cell lines.
Plangger A, Rath B, Stickler S, Hochmair M, Lang C, Weigl L, Funovics M, Hamilton G. Discov Oncol. 2022 Sep 1;13(1):84. doi: 10.1007/s12672-022-00550-w. PMID: 36048281 - Sensitivity of Osteosarcoma Cells to Concentration-Dependent Bioactivities of Lipid Peroxidation Product 4-Hydroxynonenal Depend on Their Level of Differentiation.
Sunjic SB, Gasparovic AC, Jaganjac M, Rechberger G, Meinitzer A, Grune T, Kohlwein SD, Mihaljevic B, Zarkovic N Cells. 2021 Jan 29;10(2):269. doi: 10.3390/cells10020269. PMID: 33572933
会社情報
会社名 | Biomedica Medizinprodukte GmbH |
部署名 | |
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