皆さんが普段利用されているその試薬や機器、購入にあたっては販売店の方を通して行うことが一般的と思います。特に日本では世界と比較しても「販売店システム」が発達していますが、今回は海外の状況も併せてお話しながら、このシステムの利便性、重要性と活用法についてまとめてみたいと思います。
代理店・販売店システムとは?
まず日本において、代理店・販売店といった「卸売文化」は非常に長い歴史を持っており、これは研究用製品だけでなく、食品、植物、機械など多くの分野においてこの流通システムが採用されています。研究製品においては300年以上の歴史をもつ販売店も存在しています。
ルートとしては下記の図のように、製造者(メーカー)から代理店に卸され、さらにその販売店を経由して小売されます。その代理店は販売店の別会社であったり、代理店が販売店的機能も有している場合には、そこから小売りされることもあります。
海外においては日本ほど販売店システムが網羅されているところをあまり見たことはありません。特にアメリカではメーカーが直接販売するケースが多いですが、それでも巨大販売店が存在し、複数メーカーの製品をまとめて販売することでより良いディスカウントを提供したりなど、販売店が全くないわけではありません。
代理店・販売店があることの意義
流通システムが発達した現代でも、製造者との間に代理店・販売店が存在することの意義とはなんでしょうか?いくつか挙げてみたいと思います。
輸入手続とコストを気にしなくてよい
日本で使用されている研究用製品の多くが、海外から届いているものが多いかと思います。皆さんの中にも、個人輸入された経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、輸入手続きは細心の注意を払って行う必要があります。
注意点としては
- 検疫手続(動物検疫、植物検疫)
- 毒劇物の調査
- 他法令の調査
- 条約に関する調査(ワシントン条約など)
- 通関手続
などがあります。
最初の4つの注意点は以前記述した、「【大丈夫?その輸出入!】研究に使う物資や技術の輸出や輸入、正しく行っていますか?」にも詳しく記載していますのでご参照ください。
さて、最後の「通関手続」ですが、これをしっかり行わないと「関税法違反」で処罰対象となります。
例えば、本来価格よりも低い価格を申告価格とする(アンダーバリュー)、輸入数を偽る、申告していない物を輸入する(密輸)などが対象となります。通関できない場合は空港の保税倉庫、保税地域で留め置かれることとなり、一定期間以上の保管は保管料がかかります。保管が長くなればなるほどそのコストが積み上がります。
参考:税関ウェブサイト:関税法の罰条について
関税法の罰条 : 税関 Japan Customs
輸入代理店(商社)では、研究者の皆様が安心して使用できるよう、海外メーカーから届いた荷物の輸入申告をきちんと行ってお届けしています。上記のような確認事項を含めた正規通関手続は大変手間がかかります。
またメーカーへの支払い、輸送業者への支払いについても、外貨での支払いや為替差損(差益)を気にする必要がなくなります。
小分け販売がされている製品もある
特にチップやチューブといった消耗品の場合、海外品は大箱で販売されていることが多くあります。小箱販売では価格と輸送費の関係もあり、コストメリットを見いだせないからです。
とはいえ、この大箱を日本に一箱、二箱で輸入するとなると、送料と通関費用だけでその製品コストを軽く上回ってしまいます。そして日本で大箱を在庫として置けるスペースはなかなか確保が難しいところです。
そのため、よく売れる製品についてはまとめて輸入することで在庫にしたり、製品によっては大箱(複数本)から小分け販売することで、価格を抑えながら研究者の皆様にお届けしています。
消耗品だけでなく、試薬製品についても言えることですが、代理店・販売店が緩衝役(バッファー)として存在することで成しえるメリットです。
※海外の大学・研究施設などでは「学内ストア」がある所もあり、そういったところで大箱購入・在庫しているケースもあります。試薬や消耗品の「自動販売機」があるところも・・・。
製品情報が日本語で提供される
輸入代理店には毎日海外のメーカーから多くの新製品情報が届いています。
英語で書かれている情報をそのまま届けることもできるのですが、研究者の皆様によりわかりやすく日本語で情報をお届けすることで、
利便性を高め、お役に立てるよう努めています。
また数多くの情報が蓄積していくため、輸入代理店の多くが定期的にニュースレターを発行し、新製品の紹介や特集記事作成による関連製品の網羅的紹介で、研究の一助となるように努めています。
そういったニュースレターを活用して、研究の効率化が図ることができるかと思います。
質問や問題があった時に問い合わせ代行してもらえる
購入前の製品の質問、購入後の製品トラブルがあった時に問い合わせを代行してもらえる点も利点の一つです。問い合わせによっては、
過去にも似たような内容を受けていてすぐに回答できることもあったり、製品トラブル時には交換品提供や返金交渉をしています。
海外メーカーの場合、一から英語を書くよりも、代理店や販売店に確認することでより迅速な回答入手が可能であったりもします。
限られた時間の中で最大限の結果を得るためにも、問い合わせの代行は活用しましょう。
研究室に日々訪問して、受注や情報提供をしてもらえる
販売店システムが乏しい海外の国では、こういった訪問は稀で、日本から海外に研究留学された方は最初戸惑うこともあると思います。決まった製品を買うだけであれば良いのですが、新しい製品やキャンペーンの情報はみずから入手しに行く必要があります。
日本では販売店の方は日々、担当研究室を訪問して納品や受注、またキャンペーンや研究に関連する製品の情報を提供してくれます。もちろん進んでの情報入手も必要ですが、そこにかける時間と労力の削減が可能です。
また代金支払いにおいても、複数メーカーの製品を購入した場合でもメーカーそれぞれに支払う必要がなく、販売店が取りまとめてくれるため、経理面での管理が楽になっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
時には複雑なシステムと感じられることがあるかもしれませんが、代理店・販売店の活用は研究の効率化につながるでしょう。
ぜひ、活用してみてください。