April

4月ー春の訪れと共に晴れて新しい研究室に配属となり、ワクワクやドキドキが止まらないのは、なにも研究生活初心者だけでなく、研究生活に慣れたヒトでも同じです。

初めて入った研究室―どんなことに気を付けて研究生活をスタートすればよいでしょうか??

今回は、そんな不安をかかえた方に「元・研究者」「元・研究用試薬・機器の輸入商社社員」である著者から、「当たり前だけどあまり教えてもらえないかも?」な、「10のアドバイス」をお贈りします!

遅刻はしない!

研究生活に限らず、当たり前すぎるかもしれませんが・・・ついつい前日遅くまで論文を読んだり、遊びすぎたりして、「講義が無いからいいや~」と研究室に来るのが遅くなってはダメです!

日々の実験計画を立てる意味でも、(研究室から「●●時までに来なさい」、などと言われなくても)できるだけ規則正しく毎日を過ごすことが大事です。

ラボの「お作法」を早めに知ろう!

特に別の研究室から移ってきたばかりの方にありがちなのが、以前の研究室でやっていた方法を新しい配属先でもやってしまうこと。

それが大きな影響を与えないようなことであっても、もしかすると以前からいるメンバーには小さな迷惑をかけているかも・・・。

実験手法についても同じで、例えば免疫組織染色のサンプル処理手順一つにしても、大まかな流れは一緒でも細かい部分は、研究室によっても結構違ったりしています。

周りに声をかけながら、各ラボでの「作法」を早めに聞いておきましょう。

休日の実験に注意!

飼っている細胞や動物次第では、研究室に人の少ない休日や祝日に実験や培地交換,床替えをする必要があるかもしれません。

こういった時に事故が起きると、平日に比べて被害が拡大する可能性が高まります。

休日にどうしても来て実験や活動しなければならない場合は、必ず前もって研究室の上司、メンバーに相談しておきましょう。

また特に火の元、電気関係の取り扱いには注意しましょう。

共通試薬・消耗品の管理は積極的に協力!

研究室全体で共通使用する器材や試薬、消耗品は多くあります。例えば、培地類、チップやチューブ類、抗体などですね。

いざ実験を始めてから、「あれ!この試薬が足りない!」「チップ滅菌されてないじゃん!」といったトラブルが無いように、共通試薬や消耗品の管理は積極的に協力しましょう。

また実験台および実験台周囲の掃除もしっかりと行いましょう。実験操作がしやすくなる他、試薬・消耗品の残量がわかりやすくなります。

これであなたのラボでの評判はうなぎ登り。

文献の管理はこまめに!

研究結果の集大成は論文として雑誌に「Publish」すること。そして論文を書くためには様々な過去の論文を「引用文献」として記載する必要があります。

日々文献を読んでいても、読み終わった後にしばらくするとどうしても細かい部分は忘れてしまうもの。それで「いざ、論文にまとめよう!」と思っても「●●年の、あの著者の、うーんと・・・」となってしまっては、読み返すことを含めても大きな時間のロスです。

それならば、最初からきちんと「文献管理ソフト」を使って、まとめていきましょう!

「文献管理ソフト」の定番と言えば、やはり「EndNote(エンドノート)」。単なる文献管理や論文作成支援だけでなく、クラウドでの同期・共有機能もあり、ますます便利に。

普段からまとめていくことで、自分の記憶にも定着しやすくなりますよ。

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「キット」使用前に必ず中身を確認!

現在では世界中にある多くのメーカーから、研究が楽になる試薬や機器が販売されています。

特に「キット」類は、多少値段が高くても、時間が節約できて安定した結果を得るには良い選択肢の一つです。

ただ、稀にキット構成品の「不足」があったりします。

実験を始めてからキット構成品の不足が判明しても、特に貴重なサンプルの場合は取り戻しが効かないことがあります。

実験を始める前に、「必ず」キット構成品に不足がないかどうかを確かめて頂くことをおススメします。

※キット構成品の中には、保存温度帯が違うものが含まれることがあります。キット内にない場合は、別の温度で保管されていないかも確認してみてください。

※同じキットでも、ロットによって過去の製品と仕様が変わっていることもあります(例:抗体の濃度等)。使用前に、もう一度よく説明書を確認してみましょう。特に「自分の実験ノート」でキット構成品の使用量を記載し、それに従って実験している場合に結果がおかしい場合は、キット構成品を詳しく調べてみましょう。

すぐに捨てないで!試薬の「ラベル」

試薬の「ラベル」は、使用中や使用後に捨てられてしまうことが多いのですが・・・ラベルには多くの情報が含まれていることがあります。

ラベルがあれば、ロット番号だけでなく輸入日や製造日が判明するケースもあり、リコール(メーカーサイドの不具合報告)やトラブル時のサポート・解決にとても役立ちます。

ノートに記入、写真を撮っておくなどして、こまめに記録しておきましょう。

メーカー・代理店・販売店担当者とは仲良くしよう!

研究室に製品を届けてくれる販売店の方、製品の情報を宣伝しに来てくれるメーカーや代理店の方は、今までの経験から幅広い知識と情報網を持っています。

研究での困りごと、「こんなものがあったらな」といったことを相談すると、その解決の糸口となる情報を提供してくれるかもしれません。納期に関しても最大限の努力をしてくれます。

普段から良くコミュニケーションを取って、信頼関係を築いておくとよいでしょう。

研究の機密情報取り扱いに注意!

研究内容によっては、企業とのコラボレーションで実験を進めていることもあったりします。そういった場合、「秘密保持契約」が結ばれていることもあり、研究の状況や結果を外部に漏らすことで相手先に大きな被害を与え、損害賠償請求を受ける可能性もあります。
また学会のポスター発表、口頭発表等でも、情報を漏らしてしまうことで競争相手に「先を越される」ケースも起こりえます。
その他、SNSでの投稿(実験データ)やAIサービスへの入力で情報が漏洩する可能性があります。

どの情報は出しても問題ないか、事前に上司や周囲と相談するようにしましょう。

法規制・安全管理に注意!

研究で使用する試薬、機器、化学物質、細菌やウイルスなどには、危険なものが含まれる場合があります。試薬であれば発がん性物質、機器であれば遠心機や紫外線、細菌やウイルスは毒性や感染性があったりと、それをうかつに廃棄すると大問題になることがあります。

また海外から輸入、あるいは海外へ輸出する際にも、様々な法規があり、違反すると処罰を受けることがあります。

各研究施設の安全管理指針に沿って実験を行い、また扱う対象についての危険性と安全性、そして各種法規制について正しく理解しましょう。

そしてヘッドホンやイヤホンで音楽などを聴きながら実験をしている方もいますが、機械の異常や警報音など、音から判断できる危険情報を聞き逃す可能性が高まりますので、おすすめしません。(というか、やめましょう。)

※研究における主な法規制関係は、下の記事も参考にしてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ごく当たり前のことかもしれませんが、これらを意識することで研究生活がより快適になるのではないでしょうか。

最後に一つ、「11個目」のアドバイスがあります。それは、

「とにかく健康には気を付けて、心と身体を大事にすること!

です。実験や論文読み書きで遅くまで頑張っても、心と身体を壊して「進めたかった実験」「進めたかったこと」ができなくなってしまってはなりません。

どうか、皆さんの研究生活が素晴らしいものになりますように!