厚生労働省発表のデータによると,最も多い日本人の死因は「がん」であることが報告されています。(※)
がんの治療に重要なポイントが,「診断によるがんの早期発見と治療の開始」であることは想像に難くありません。
そのようながんの発見・進行状態・治療状況の確認と予後の予測には様々な「バイオマーカー」が利用されています。
そして理解を深めるために、がんの「バイオマーカー」を測定・同定し,検証することが必要不可欠となっています。
これまでの世界中の医師や研究者による研究の成果で,有望な治療ターゲットおよび予後の指標となりうるバイオマーカーが数多く発見されてきており,今でもその数は増え続けています。
オーストリアのウィーンに拠点を持つ「Biomedica Medizinprodukte GmbH」社(以下,Biomedica社)では,がんのバイオマーカー測定に有用な,研究用のELISAキットを数多く取り揃え,販売しています。
例えば,がんに関連する因子ではNeuropilin-1、 Periostin、Semaphorin 4D、Osteoprotegerin、RANKL、LRG1、IL-6、VEGF、Angiopoietin-2 などのELISAキットを取扱っており,日本ではフナコシ株式会社が代理店として販売を行っています。
今回の記事では,その中からNeuropilin-1, Periostin,Semaphorin 4D,LRG1,RANKLに焦点を当ててご紹介します。
※2019年のデータ。出典:厚生労働省ウェブサイト「死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(人口10万対)」
Biomedica社とは?
Biomedica社は1988年に設立されました。30年以上に渡るイムノアッセイ製造開発の経験と実績から,高品質な製品とレベルの高い技術サポートを提供しており,製薬会社・研究施設・CROを含め,世界中の多くの研究者にBiomedica社の製品が愛用されています。
Biomedica社は研究者の皆様のご要望にお応えするため. 多くの研究者や医師と密接にコラボレーションし. 製品の開発を行っています。
Biomedica社ELISAキットの優れている点
- 正確性:製品はバリデーション(検証)をしっかりと行い,データの正確性を高めています。
- 利便性:測定範囲は,臨床由来の検体に最適化されています。※日本では「研究用」試薬として販売されています。
- 特異性:優れた特異性を持つ,Biomedica社独自の抗体が使用されています。
- 簡単:希釈不要で,すぐに使用できるキャリブレーター(スタンダード)とコントロールが含まれています。
- 少ないサンプル量からでも測定できます。
- 信頼性:多数の使用文献があり,世界中で評価されています。
Neuropilin-1 (NRP1)とは?
Neuropilin-1 (NRP1,CD304 あるいはBDCA-4)は,923アミノ酸からなる1回膜貫通型の糖タンパク質で,腫瘍の生理機能を調節しており,チェックポイントのターゲットとして同定されました(1)。選択的スプライシングやシェディングにより,細胞外領域は可溶性のNRP1として循環系に放出されます。
組織中の高いNRP1レベルは,乳がん患者の予後不良との関連が示唆されています。
ドイツの研究者らにより,血清中の循環する可溶性NRP1の量は,早期乳がんにおける予後不良の独立したマーカーとなりうることが,2021年に報告されています(2)。この文献の血清中可溶性NRP1は,高い特異性を持つBiomedica社の NRP1 ELISAキットにより測定されました。
乳がんの他,NRP1が関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
Neuropilin-1 ELISAキット製品情報
- 商品コード:BI-20409
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:0.09 nmol/l (= 6.3 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 12 nmol/l (= 0 – 836 ng/ml)
- 交差性:ヒトNeuropilin-1と他動物種Neuropilin-1の高い配列相同性により、ブタやアカゲザル、および他動物種のNeuropilin-1に交差する可能性があります。抗体の結合部位のアミノ酸配列からNeuropilin-2との相同性は見られないため、Neuropilin-2との交差は期待されません。
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
Periostin(OSF-2)とは?
Periostin(osteoblast-specific factor,OSF-2) は,コラーゲンが豊富な繊維性結合組織で発現し,91 kDaのホモ二量体からなる可溶性の分泌型細胞外マトリックスタンパク質です。選択的スプライシングによる,少なくとも7つのアイソフォームが知られています。
Periostinは最新の治療ターゲットとして注目されており,特に神経膠腫(グリオーマ)の悪性度および潜在的な腫瘍再発のマーカーと考えられています。
また乳がん患者における,血清中の高レベルなPeriostinと低い生存率の関連性から,乳がんの病因であることが示唆されています(3)。
(4)の論文で血清中のPeriostinは,Biomedica社のPeriostin ELISAで測定されました。
その他,Periostinが関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
Biomedica社 Periostin ELISAキット製品情報
ヒトPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433
- サンプル種:血清、EDTA血漿、クエン酸血漿、ヘパリン血漿、尿、細胞培養上清
- サンプル量:10 µl / well
- 感度:20 pmol/l (= 1,800 pg/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 4,000 pmol/l (= 0 – 360,000 pg/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
マウスPeriostin ELISAキット
- 商品コード:BI-20433MS
- サンプル種:血清、血漿
- サンプル量:≤ 5 µl / well
- 感度:0.003 nmol/l (= 0.27 ng/ml)
- 標準曲線範囲:0 – 16 nmol/l (= 0 – 1,400 ng/ml)
- 製品紹介ページ:Biomedica社 / フナコシ株式会社
- 使用文献リスト:Biomedica社ウェブサイト「使用文献リスト」
Semaphorin 4D (Sema4D)とは?
Semaphorin 4D (Sema4D,CD100)は,膜貫通型タンパクファミリーの1種です。また分泌型タンパク質として,細胞間コミュニケーションを含め,主要な細胞の機能を調節することが知られています (11,12,13)。
そして,多くの生理機能,例えば軸索誘導・免疫調節・血管新生・腫瘍の進行・骨代謝への関与が報告されています(14,15,16,17)。
Sema4Dは,がんにおける新しい臨床バイオマーカーおよび治療ターゲットとされています。
最近の研究によれば,がんの進行と骨転移発生に関連していると報告されています。(5,6)。
その他,Sema4Dが関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
Leucine-rich alpha-2-glycoprotein 1 (LRG1)とは?
Leucine-rich alpha-2-glycoprotein 1 (LRG1,LRG)は,分子量38.2 kDaの糖タンパク質で,TGFβ補助受容体のEndoglinの他,TGFβ1やミトコンドリア電子伝達系のタンパク質であるCytochrome Cに結合します(18)。
がんでは血管形成に関与する,重要なタンパク質と位置付けられています。特にLRG1は多くの腫瘍微小環境に豊富に存在しており,血管機能不全に関わっているとされているため,潜在的な治療ターゲットとなっています(7)。
その他,LRG 1が関連する疾患領域はこちらをご覧ください。
RANKL/RANK/OPG系とは?
RANKL/RANK/OPG 系は,がん早期ステージにおける骨転移の進行と,腫瘍の生理機能への影響が報告されています(9)。
その調節異常は,転移性骨疾患との関連が広く確認されています(10)。
Biomedica社のOPG およびRANKL ELISA キットは,それぞれの研究で広く使用されています。
製品に関する日本でのお問い合わせ先
Biomedica社製品は,フナコシ株式会社を通してご購入頂けます。
製品についての技術的なご質問は,
フナコシ株式会社 テクニカルサポート部
電話:03-5684-1620
FAX:03-5684-1775
E-mail:reagent@funakoshi.co.jp
までお問い合わせください。
文献情報
1. Neuropilin-1: a checkpoint target with unique implications for cancer immunology and immunotherapy. Chuckran CA et al., J Immunother Cancer. 2020. 8(2):e000967.
2. Soluble Neuropilin-1 is an independent marker of poor prognosis in early breast cancer. Rachner TD et al., J Cancer Res Clin Oncol. 2021. 147(8):2233-2238.
3. High serum levels of periostin are associated with a poor survival in breast cancer. Rachner TD et al., 2020. 180(2):515-524.
4. Characterization of a sandwich ELISA for the quantification of all human periostin isoforms. Gadermaier E J Clin Lab Anal. 2018. 32(2):e22252.
5. Plasma levels of Semaphorin 4D are decreased by adjuvant tamoxifen but not aromatase inhibitor therapy in breast cancer patients. Göbel A J Bone Oncol. 2019. 4;16:100237.
6. Semaphorins as emerging clinical biomarkers and therapeutic targets in cancer. Mastrantonio R et al., Theranostics. 202. 15;11(7):3262-3277.
7. Leucine-rich alpha-2-glycoprotein 1 (LRG1) as a novel ADC target. Javaid F et al., RSC Chem Biol. 2021. 31;2(4):1206-1220.
8. RANKL/RANK/OPG system beyond bone remodeling: involvement in breast cancer and clinical perspectives. Infante M J Exp Clin Cancer Res. 2019. 8;38(1):12.
9. Serum receptor activator of nuclear factor κB ligand (RANKL) levels predict biochemical recurrence in patients undergoing radical prostatectomy. Todenhöfer T, BJU Int. 2014. 113(1):152-9.
10. Prognostic Value of RANKL/OPG Serum Levels and Disseminated Tumor Cells in Nonmetastatic Breast Cancer. Rachner TD et al., Clin Cancer Res. 2019. 15;25(4):1369-1378.
11. Semaphorins command cells to move. Kruger, et al, 2005. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 6, 789–800. PMID: 16314868
12. Biology and function of neuroimmune semaphorins 4A and 4D. Nkyimbeng-Takwi et al., 2011. Immunol. Res. 50, 10–21.
13. The semaphorins. Yazdani, U., Terman, J.R., 2006. Genome Biol. 7, 211.
14. Sema4D induces angiogenesis through Met recruitment by Plexin B1. Conrotto, P. et al., 2005. Blood 105, 4321–4329.
15. Suppression of bone formation by osteoclastic expression of semaphorin 4D. Negishi-Koga, T. et al., 2011a. Nat. Med. 17, 1473–1480.
16. Bone cell communication factors and Semaphorins. Negishi-Koga, T. et al. BoneKEy Rep. 1, 183.
17. Diverse roles for semaphorin-plexin signaling in the immune system. Takamatsu, H., Kumanogoh, A., 2012. Trends Immunol. 33, 127–135.
18. Serum leucine-rich alpha-2-glycoprotein-1 binds cytochrome c and inhibits antibody detection of this apoptotic marker in enzyme-linked immunosorbent assay. Cummings C et al.Apoptosis, 2006; 11(7): 1121-9.
会社情報
会社名 | Biomedica Medizinprodukte GmbH |
部署名 | |
住所 | Divischgasse 4, 1210 Vienna, Austria |
TEL | +43 12910745 |
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